それぞれの課題図書の紹介と考えるポイント、声がけのヒントなど、読書感想文に役立つ情報を、順次公開しています。
内容の紹介
舞台は1854年のロンドンの下町・ブロード街です。貧富の差が激しい当時のイギリスで、両親をなくした主人公の少年・イールも、苦しい生活を強いられています。そして8月のある日、多くの人の命を奪う「青い恐怖」が、ブロード街を覆い尽くします。
読む前の下ごしらえ
考えてほしいこと
読む前に、次のことを考えてみましょう。
あなたは、「青い恐怖」とは何だと思いますか。
読んだ後に
読み終わったら、次のことを考え、書いてみましょう。
考えるヒント
- 主人公・イールについて、見習いたい点はありますか? それはどんなところでしょうか。詳しく書いてみましょう。
- あなたの生活や人生において、困難を乗り越えるために必要なことは何でしょうか。考えて書いてみましょう。
- ジョン=スノウ博士は、実在の人物であり、集団における病気の流行状態を研究する「疫学(えきがく)」の祖と言われています。ジョン=スノウ博士について、調べてみましょう。
保護者の方へ
上記の「考えるヒント」を参考に、対話をしながらアイデアを拡げてください。アイデアのメモをたくさん作り、並べ替えながら、感想文の構成を練りましょう。
1854年、イギリスのブロード街で実際に起こったコレラの伝染を題材にした物語です。作中に登場するジョン=スノウ博士やホワイトヘッド牧師は実在のモデルがいますが、主人公の少年・イールは架空のキャラクターです。
イールは常に何かに追われ、あるいは追いかけているため、スピード感と緊張感に満ちた物語展開となっています。イールは、物語の早い段階から苦境に立たされます。皆が余裕のない生活を送っている19世紀の世相を踏まえ、周囲の人物も優しい人ばかりではありません。そうした逆境の中、自分のことだけではなく、街に生きる人々を何とか救いたいという正義感、そして、頭の回転の速さと行動力で、コレラが空気感染ではなく、水などを経由した経口感染で広がるというジョン=スノウ博士の説を実証するべく奔走します。
恐怖と混乱が街を支配していますが、イールとジョン=スノウ博士の武器は、科学的な思考力です。調査に必要な視点「5つのW」、そして、体力、観察力、聞く力、頭、ペンを駆使し、感染の経路を明らかにしていく物語展開には、興奮を覚えずにはいられません。
読書感想文を通して考えてほしいテーマ
- 勇気
- 科学
声がけのヒント
感想文では、物語の面白さ以上に、主人公イールのたくましさや、合理的な思考の重要性に焦点を当てるとよいでしょう。また、実在の人物であるジョン=スノウ博士や、「疫学」について調べてみると、書くことの幅が広がります。
構成について
構成にルールはありませんが、どう書いたらいいかわからない時は、次のことを参考にしてください。「誰に、何を伝えたいか」
- ことばは、他者に思いを伝えるためのものです。考えたことやメモを元に、書き始める前に、「誰に、何を伝えたいか」を考えましょう。「伝えたいこと」は、できるだけ一つにしぼりましょう。
- 誰に……例)家族、友人、先生
- 何を伝えたいか……例)本の面白さ、感動したところ、自分の想い
- 「伝えたいこと」をしぼることで、構成を立てやすくなります。
文章の構成
- 文章は、三つのパートに分かれることが多いようです(※三段落で書かなければならないという意味ではありません)。
- 【はじめ】
- この文章で「伝えたいこと」や、あらすじを、簡単に書きます。なお、あらすじの有無を学校から指定されることもあります。
- 【なか】
- 本に貼った付せんや、考えたこと、メモを元に、「伝えたいこと」をより詳しく書いていきます。
- 物語の内容と自分の体験を交えると、「伝えたいこと」の説得力が増し、生き生きとした作品に仕上がります。
- 物語で印象に残った場面や人物について書きましょう。また、それに対しどう感じたかを書きましょう。
- 関連する自分の体験を書きましょう。「いつ、どこで、誰が、どうした」から書き始めるとよいでしょう。
- 体験は、過去の思い出だけでなく、本を読んだ後に人に聞いたことや、調べたことでもよいでしょう。
- 体験の最後には、その体験を通して学んだこと・感じたことを、物語の内容と絡めながら書きましょう。
- 学んだことを実行するのはなぜ難しいのか、そのためにはどうすればよいのかといった、より現実に根ざした内容の段落を追加すると、深みが増します。
- 【おわり】
- 「伝えたいこと」をもう一度強調し、未来につながる決意や前向きなことばで締めます。