それぞれの課題図書の紹介と考えるポイント、声がけのヒントなど、読書感想文に役立つ情報を、順次公開しています。
内容の紹介
莉子は、祖父の一周忌の法要のため、祖父や亡き母が住んでいた古い家を訪れます。遠縁のおばあさんから、池に咲く蓮の花にまつわる不思議な話を聞いた莉子は、花の開く音を聞くため、古い家に泊まることになります。
読む前の下ごしらえ
考えてほしいこと
読む前に、次のことを考えてみましょう。
- あなたはどこで生まれ、育ちましたか。思い出してみましょう。
- もう一度会いたい家族や知り合い、戻りたい場所はありますか。
- 物語には、蓮の花が出てきます。蓮の花についてイメージをつかみましょう。
読んだ後に
読み終わったら、次のことを考え、書いてみましょう。
考えるヒント
- お父さんやお母さん、あるいは、家族の方に、あなたのルーツを聞いてみましょう。あなたが生まれる前、どこで、どのように暮らしていたのでしょうか。可能であれば、そこに行ってみましょう。
- あなたの家族を象徴する場所や物はありますか? あれば、詳しく書いてみましょう。
- 莉子は、これから、新しいお母さんとどのように関わっていくと思いますか。
保護者の方へ
上記の「考えるヒント」を参考に、対話をしながらアイデアを拡げてください。アイデアのメモをたくさん作り、並べ替えながら、感想文の構成を練りましょう。
莉子は母を亡くしています。新しい母を「かけがえのない存在」だと感じる一方、亡くなった母を忘れていくことに深い寂しさを抱いています。莉子は、「露といっしょに蓮の中にしみこんで根や茎をめぐり、つぼみに溜まった誰かの想い」を辿って過去を旅しますが、それは莉子のルーツ(根)を探る旅でもあります。莉子は、かつて家で暮らした祖父母の想い、母の想い、叔母たちの想いや、様々な人の想いに触れていきます。
昔と今では、家の様子も周囲の自然の様子も変わっています。蓮が美しく咲く庭も、かつては荒れた雑木林でした。家で暮らす人々の手によって形作られる風景が、丁寧に描かれていることにも注目してください。
莉子は過去に遡り、まだ少年の頃の祖父と出会います。そこは、旅の終着点であり、始まりでした。家を後にした莉子の手には、蓮の種が握られています。種には、かつてその家で暮らしていた人々の想いが詰まっています。祖父は亡くなり、家は取り壊されてしまいますが、祖父が古代蓮の池を再生したように、莉子もまた、実母の思い出を胸に、新しい母と共に生き、家族の歴史を作っていくことになるはずです。
読書感想文を通して考えてほしいテーマ
- 家族
声がけのヒント
物語では現在と過去を行き来しますから、出来事の因果関係を取り違えないよう、注意深く読みましょう。物語では、莉子の心に沿ってより古い過去へと遡っていきますが、過去から現在へ逆方向へ読み直してみると、祖父や家族の心情・出来事の流れが、より明確に見えてきます。
なお、今年の読書感想文で「家族」を扱った本としては、『ぼくとテスの秘密の七日間』があります。リテラでは『【2015読書感想文特集】『ぼくとテスの秘密の七日間』(高学年向け課題図書)』で紹介しています。
構成について
構成にルールはありませんが、どう書いたらいいかわからない時は、次のことを参考にしてください。「誰に、何を伝えたいか」
- ことばは、他者に思いを伝えるためのものです。考えたことやメモを元に、書き始める前に、「誰に、何を伝えたいか」を考えましょう。「伝えたいこと」は、できるだけ一つにしぼりましょう。
- 誰に……例)家族、友人、先生
- 何を伝えたいか……例)本の面白さ、感動したところ、自分の想い
- 「伝えたいこと」をしぼることで、構成を立てやすくなります。
文章の構成
- 文章は、三つのパートに分かれることが多いようです(※三段落で書かなければならないという意味ではありません)。
- 【はじめ】
- この文章で「伝えたいこと」や、あらすじを、簡単に書きます。なお、あらすじの有無を学校から指定されることもあります。
- 【なか】
- 本に貼った付せんや、考えたこと、メモを元に、「伝えたいこと」をより詳しく書いていきます。
- 物語の内容と自分の体験を交えると、「伝えたいこと」の説得力が増し、生き生きとした作品に仕上がります。
- 物語で印象に残った場面や人物について書きましょう。また、それに対しどう感じたかを書きましょう。
- 関連する自分の体験を書きましょう。「いつ、どこで、誰が、どうした」から書き始めるとよいでしょう。
- 体験は、過去の思い出だけでなく、本を読んだ後に人に聞いたことや、調べたことでもよいでしょう。
- 体験の最後には、その体験を通して学んだこと・感じたことを、物語の内容と絡めながら書きましょう。
- 学んだことを実行するのはなぜ難しいのか、そのためにはどうすればよいのかといった、より現実に根ざした内容の段落を追加すると、深みが増します。
- 【おわり】
- 「伝えたいこと」をもう一度強調し、未来につながる決意や前向きなことばで締めます。