内容の紹介
大村智さんは、微生物が作り出す化学物質の研究をして、寄生虫が引き起こす恐しい病気を防ぐ薬を開発しました。この薬は、一年間に二億人以上に配られ、人々の命を守っています。大村さんは、その功績が認められ、アメリカの製薬会社・メルク社のウィリアム・キャンベル博士とともにノーベル賞を受賞しました。世界に認められる研究を支えたものは、一体何だったのでしょうか。この本では、大村智さんが、どのような人生を歩んできたのかが紹介されています。
読む前の下ごしらえ
考えてほしいこと
読む前に、次のことを考えてみましょう。
- 大村智さんは、ノーベル賞を受賞しました。あなたは、ノーベル賞を知っていますか。
- あなたには、今、一所懸命に取り組んでいるものはありますか。
読む
読む時は、印象に残った場面や不思議に思った場面など、「心が動いたところ」にふせんを貼りながら読みましょう。書く時の材料になります。
また、できれば、家族や友だちと、同じ本を読んでみましょう。自分と違う感想や考え方を知ると、感想文の内容がより深いものになります。
準備する
気持ち
本を読んで感じた気持ちをことばにするのは、なかなか難しいものです。読み終わったら、次の「気持ちについて考えよう」シートを印刷して、感じた気持ちに丸をつけてみましょう。対話や作文の際のヒントになります。
体験
読書感想文では、本の内容と自分の体験を結びつけることが大切です。自分の体験が思いつかない場合は、このページの「考えるヒント」を参考にして、本のテーマについて誰かに聞いたり、調べたり、新しく何かをしてみたりするとよいでしょう。
合わせて知りたい
ノーベル賞について
ノーベル賞は、ダイナマイトを発明したスウェーデンの科学者、アルフレッド・ノーベルがつくった、人類の平和や進歩のために努力した人をたたえる賞です。よりくわしく調べてみましょう。
考えるヒント
第一章
第一章は、大村さんの少年時代について紹介されています。
- 少年時代の大村さんは、どんな生活をしていましたか。
- 家族や学校の先生から大村さんはどのようなことを学んだでしょうか。
- 心に残る言葉があったら、メモしておきましょう。
- あなたと同じところ、または、まったく違うところはありますか。
第二章
第二章は、大村さんの大学時代から、研究者の道を選ぶまでが紹介されています。
- 大学時代に大村さんが学んだことは、どんなことでしたか。
- 夜間高校の先生をしていた大村さんが、「学び直した」こととは、どのようなことでしたか。
第三章
第三章は、大村さんの若き研究者としての日々と、アメリカでの留学生活が紹介されています。
- 大村さんは、どうしてアメリカで研究をしたいと考えたのでしょう。
- 大村さんが、アメリカでの生活の中で気が付いた、日本とアメリカの研究や研究費に対する考え方の違いはどんなものでしたか。
第四章
第四章は、日本に帰国した大村さんが、新種の微生物から、エバーメクチンという化学物質を発見し、多くの人々を救う薬を開発するまでが紹介されています。
- 大村さんが世界の人に認められる研究を成功させることができたのは、どうしてだと考えますか? あなたの考えを書きましょう。
- 仕事とは、人の役に立つことです。あなたは、将来、大人になったとき、どんなことをして、どんな人々の役に立ちたいと思いますか?
- 「苦しい人生こそ楽しい人生」と大村さんはいいます。あなたは、この言葉からどのようなことを考えますか。
生き方について
大村さんは、農業やスポーツ・教師の経験を通し、「どんなことを大切にして生きていくか」を学び、それを研究に活かして大きな成功を収めました。
- あなたが見習いたい、大村さんの考え方はありますか。
- 最近、勉強やクラブ活動、家庭など、あなたの生活を通して学んだ「生きる上で大切なこと」はありますか。くわしく書いてみましょう。
保護者の方へ
上記の「考えるヒント」を参考に、対話をしながらアイデアを拡げてください。アイデアのメモをたくさん作り、並べ替えながら、感想文の構成を練りましょう。
読書感想文を通して考えてほしいテーマ
- 人とのつながり
- 人の役に立つ
- 仕事への誇り
- 夢をあきらめない
- 学び
- 微生物
- 情熱
- 教育
- 生き方
- 科学的なものの見方
- 科学的な態度
この本について
2015年、大村智さんは「線虫の寄生によって引き起こされる感染症に対する新たな治療法に関する発見」により、ウィリアム・キャンベルさんと共に、ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。本書でも紹介されていますが、大村さんを始めとする研究者の努力により、感染症に怯える世界中の人々を救うことができたのです。
本書では、自然に対する眼差しや研究にかける一途さなどが、どのような経験から培われたのかが描かれています。大村さんが大切にしている言葉として、「一期一会」「至誠天に通ず」という二つの言葉があります。それは、「人との出会いを大切にする」「何事にも誠心誠意取り組む」という意味ですが、大村さんの生き方は、まさにこの二つの言葉の実践としてとらえられます。
これからの自分の人生をどのように歩んでいくのか考える上で、みなさんに参考にしてほしい一冊です。
合わせて読みたい
2015年課題図書です。リテラでは、「ちいさなちいさな:めにみえないびせいぶつのせかい」のページで紹介しています。目に見えない微生物の存在と、私たちの暮らしとの関わりが、子どもたちにもわかりやすいシンプルな言葉と、あたたかいイラストによって描かれています。
構成について
構成にルールはありませんが、どう書いたらいいかわからない時は、次のことを参考にしてください。「誰に、何を伝えたいか」
- ことばは、他者に思いを伝えるためのものです。考えたことやメモを元に、書き始める前に、「誰に、何を伝えたいか」を考えましょう。「伝えたいこと」は、できるだけ一つにしぼりましょう。
- 誰に……例)家族、友人、先生
- 何を伝えたいか……例)本の面白さ、感動したところ、自分の想い
- 「伝えたいこと」をしぼることで、構成を立てやすくなります。
文章の構成
- 文章は、三つのパートに分かれることが多いようです(※三段落で書かなければならないという意味ではありません)。
- 【はじめ】
- この文章で「伝えたいこと」や、あらすじを、簡単に書きます。なお、あらすじの有無を学校から指定されることもあります。
- 【なか】
- 本に貼った付せんや、考えたこと、メモを元に、「伝えたいこと」をより詳しく書いていきます。
- 物語の内容と自分の体験を交えると、「伝えたいこと」の説得力が増し、生き生きとした作品に仕上がります。
- 物語で印象に残った場面や人物について書きましょう。また、それに対しどう感じたかを書きましょう。
- 関連する自分の体験を書きましょう。「いつ、どこで、誰が、どうした」から書き始めるとよいでしょう。
- 体験は、過去の思い出だけでなく、本を読んだ後に人に聞いたことや、調べたことでもよいでしょう。
- 体験の最後には、その体験を通して学んだこと・感じたことを、物語の内容と絡めながら書きましょう。
- 学んだことを実行するのはなぜ難しいのか、そのためにはどうすればよいのかといった、より現実に根ざした内容の段落を追加すると、深みが増します。
- 【おわり】
- 「伝えたいこと」をもう一度強調し、未来につながる決意や前向きなことばで締めます。