『私にとっての宇宙』(卒業生 S・N君)


リテラでは、生徒一人ひとりの興味・関心に基づいた学びの成果を、様々な方と分かち合う場として、年に一度、『生徒作品発表会』を開催しています。

今回は、『私にとっての宇宙』(卒業生 S・N君)を掲載致します。

今回の研究では、ご自分のこれまでを振り返り、学びを導いてきた科学の魅力について考えました。
科学が人類の世界を広げてきたのと同じように、知りたいという気持ちが、Sくんの世界を広げてきたのだと伝わってくる発表になりました。

その他の発表動画は、「2022年 生徒作品発表」をご覧ください。

作品について

本人の振り返り

これはどのような作品ですか?
宇宙の広さと、その中にある学問の深さ、そしてその面白さを伝える作品。
どうしてこの作品をつくりたかったのですか?
宇宙というものの魅力を伝えたかったから。
作品づくりで楽しかったことは何ですか?
宇宙について今一度、考え直せたこと、断片的な知識や記憶が作品作りを通してつながったこと。
作品づくりで難しかったことは何ですか?
どうすれば、万人に、宇宙というものがいかに面白いかが伝わるかを考えること。
作品作りを通して学んだことは何ですか?
今までリテラで学んだことの集大成として、自分の言葉で人に伝えることがいかに大事で、難しいかを学んだ。
次に活かしたいことや、気をつけたいことはありますか?
今回の発表をきっかけに宇宙についてもっと研究したい。
来年、研究したいことはありますか?
僕には、宇宙しかないんですよ…!
この作品を読んでくれた人に一言
物理しようぜ!

生徒作品

『私にとっての宇宙』(卒業生 S・N君)

みなさんは、ブラックホールをご存知でしょうか。
ブラックホールとは、超質量の天体が自身の重力に耐えられなくなって重力崩壊を起こし、莫大な重力を有している天体です。
あらゆるもの、光さえも、吸い込みます。2019年に直接撮影に成功しましたが、正体はまだ、謎に満ちています。

私は、小学校に入る前から宇宙が好きでした。将来の夢は、宇宙飛行士でした。

しかし、その頃は、宇宙というものに漠然とした興味があっただけで、深くのめり込むほどでもありませんでした。
宇宙を、より身近に感じ始めたのは、高2の頃です。

学校の授業の一環で、自分の興味のあることについて調べる機会があり、私はブラックホールについて調べる事にしました。
調べていくうちに、学校で習っていた物理と、深く関係していることがわかりました。
それまでは、物理で学んだことが、現実の世界と結びついていませんでした。

これを習ったところで何の意味があるのかがさっぱり分からず、勉強にも身が入りませんでした。しかし、ブラックホールを調べる中で、物理で習った知識が、現実の世界につながったのです。

ある種の快感が生まれ、心が満たされるような感じがしました。
このことをきっかけに、私は再び、宇宙に惹かれるようになったのです。

私は、ブラックホールが莫大な重力を有していることは知っていました。
ある時、ブラックホールはどこにあるのか、疑問に思いました。

場所によっては、私たちの地球が吸い込まれることになるかもしれません。
調べていくうちに、ブラックホールは、銀河の中心に存在していることが多いことを知りました。

しかし、それがなぜなのかは、その時はわかりませんでした。
半年後、初めて万有引力を習ったとき、質量の大きい天体の周りを、質量の小さい天体が、一定の周期で回ることを知りました。

その瞬間、私の持つブラックホールについての知識と繋がり、疑問が一気に解けたのです。ブラックホールは莫大な重力を有しているので、その周囲を回る天体も存在するはずです。

銀河の形を想像すると、ある点を中心に、無数の星々が円状に散らばっていることになります。
だから、ブラックホールは銀河系の中心にあるといわれているのです。

それでは、私達の地球は、いつかブラックホールに吸い込まれてしまうのでしょうか。
ブラックホールの質量は莫大ですが、無限ではありません。

また、元は1つの天体であり、有する重力の大きさは、ブラックホールになっても変化しません。したがって、地球がブラックホールに吸い込まれることは、基本的にはありえないのです。

宇宙は、いくら調査や研究をしても、決してすべてを理解することはできません。
むしろ、調べれば調べるほど、疑問は増えていきます。

そこにこそ、宇宙の魅力があります。
私も、ブラックホールを調べていく中で、多くの理論や仮説を知りました。
そして、その背景や歴史を調べていく中で、当時の物理学者が、どのような疑問を持っていたのかが伝わってきました。
そして、そこから新たな発想が生まれ、現在まで理論や仮説が発展し続けてきたことを思う時、畏敬の念を抱かずにはいられません。

科学は万能であり、科学が発展していくにつれて、わからないことは減っていくと考えている人もいます。
しかし、本当は逆です。

科学が発展するにつれ、わからないことは増えていくのです。
より厳密な理論を発見しても、それにあてはまらない現実が現れます。

疑問がとけた瞬間に、わからないことが、また現れる。
心が満たされたはずなのに、また満たされなくなる。
この繰り返しが、科学を発展させてきたのです。

私たちは、この広い宇宙に比べると、目に見えないくらいの小さな存在に過ぎません。
しかし、その小さな存在は、この宇宙の広さを感じることができるのです。

世の中に活かせるようになどと、そんな大それたことではなく、ただただ、知りたいという、純粋な好奇心や憧れが、私にはあります。
宇宙に終わりがないように、科学にも終わりはありません。
私は死ぬまで、科学を学び続けます。

これで、発表を終わります。
聞いてくださり、ありがとうございました。

この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

カテゴリー: 生徒作品

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