注意事項
内容の紹介
1930年代の終わり、ルイス・ミショーは、アフリカ系アメリカ人の多く暮らす街「ハーレム」で、「黒人のために黒人が書いた」本を売るための書店を開きます。人種差別意識の色濃く残る時代、黒人が自分たちのことを知ってこそ初めて自立できるという思いがあったからでした。彼の人生、そして時代のうねりが、つなぎ合わされた様々な資料や人々のインタビューから浮かび上がります。
読む前の下ごしらえ
考えてほしいこと
読む前に、次のことを考えてみましょう。
- あなたは本を読むのが好きですか。
- 本を読むのが好きな人:あなたはなぜ本を読むのが好きなのですか。
- 本を読むのが嫌いな人:あなたはなぜ本を読むのがきらいなのですか。
- 人を差別した経験や差別された経験、または、差別を見た・聞いた経験はありますか。
読む
読む時は、印象に残った場面や不思議に思った場面など、「心が動いたところ」にふせんを貼りながら読みましょう。書く時の材料になります。
また、できれば、家族や友だちと、同じ本を読んでみましょう。自分と違う感想や考え方を知ると、感想文の内容がより深いものになります。
準備する
気持ち
本を読んで感じた気持ちをことばにするのは、なかなか難しいものです。読み終わったら、次の「気持ちについて考えよう」シートを印刷して、感じた気持ちに丸をつけてみましょう。対話や作文の際のヒントになります。
合わせて知りたい
スウェーデンのドキュメンタリー「The Black Power Mixtape」より。
ルイス・ミショーさんの肉声と共に、店内の様子がわかります(店の移転後かと思われます)。
韻を踏んだメッセージはとてもパワフルです。
体験
読書感想文では、本の内容と自分の体験を結びつけることが大切です。自分の体験が思いつかない場合は、このページの「考えるヒント」を参考にして、本のテーマについて誰かに聞いたり、調べたり、新しく何かをしてみたりするとよいでしょう。
考えるヒント
ルイス・ミショーさんについて
- ルイス・ミショーさんは、誰も本など読まないと言われたハーレムの街で本屋を開きます。
- 書店には、ルイス・ミショーさんのどんな思いが込められていましたか。
- 本を読むことと、人や人種が社会で自立することには、どんな関わりがありますか。
- 本書には、ルイス・ミショーさんに関わるたくさんの人が出てきます。
- 印象に残った人物や言葉はありますか。また、それはなぜですか。
- この本の元のタイトルは「No Crystal Stair」です。このタイトルは何を表しているのか、考えてみましょう。
差別について
この本では、黒人と白人の人種差別が描かれています。差別には、人種だけではなく、身分・職業・地域・性・能力など、様々な種類があります。
- あなたの社会や身の回りに差別はありますか。あなたはそれについて、どう感じますか。
ルイス・ミショーさんは、黒人たちのために何ができるかと問う白人の学生にこう言います。
「あんたたちはいつだって、『わたしたち』になにができるか、というが、それじゃあだめだ。大事なのは、1人の人間として、『きみ』がなにをするかだ」(119ページ)
- あなたは、身の回りの差別について、何をしますか?
ルイス・ミショーさんは、「知識こそが力だ」と言います。
- なぜ、「知識は力」なのですか。
- 知識がないとどうなりますか。
- 自立して生きるとは、どういうことですか。
- あなたは、学校や経験から得た知識で、将来どんなことをしたいですか。
- それは、社会にどのような価値を生み出しますか。
読書感想文を通して考えてほしいテーマ
- 仕事への誇り
- 勇気
- 夢をあきらめない
- 大切な場所
- 学び
- 差別
- 平等
- 情熱
- 想像力
この本について
この本の作者ヴォーンダ・ミショー・ネルソンは、執筆するにあたり、大伯父にあたるルイス・ミショーさんに関連するインタビュー記事や記録の収集、また、直接ミショーさんに会ったことのある人に聞き取りを行っています。この本では、そうした資料がモザイクのように並べられ、ルイス・ミショーさんの生涯と、彼が作った「ナショナル・メモリアル・アフリカン・ブックストア」が黒人社会に与えた影響が描き出されています。
アメリカでは、アフリカの人々を不当に連れ去り、労働力として売買する奴隷制が、建国前から続いていました。1863年にリンカーンによる奴隷解放宣言がなされ、1865年には奴隷制を廃止するアメリカ合衆国憲法修正第13条が成立しましたが、人種間の差別は21世紀になる今も残っています。
ルイス・ミショーさんの生涯は、決して平穏なものではありませんでした。「船乗りがあちこちの港に錨をおろしてみて初めて、ここという波止場を見つけるように」(7ページ)、自分の胸の底にある熱を持て余しながら、自分の居場所を探し続けていました。彼がハーレムに本屋を開いたのは、本書によると44歳の時です。最初は理解されなかった本屋ですが、街の人々が少しずつ本を読み始め、ルイス・ミショーさんの人柄に惹かれて人が集い、やがて彼の本屋は、黒人文化の研究や彼らの権利を訴える集会の拠点となっていきます。
ルイス・ミショーさんをはじめ、本書には様々な人物の様々な言葉が紹介されます。心に響く言葉もあれば、反発を覚える言葉もあるでしょう。そのほとんどが、時代を生きた実際の人物の言葉です。ルイス・ミショーさんは、知識こそが力だと信じていました。知ること・考えることが、自分の根(ルーツ)や未来にどんな影響を与えるのか、みなさんもぜひ考えてみてください。
構成について
構成にルールはありませんが、どう書いたらいいかわからない時は、次のことを参考にしてください。「誰に、何を伝えたいか」
- ことばは、他者に思いを伝えるためのものです。考えたことやメモを元に、書き始める前に、「誰に、何を伝えたいか」を考えましょう。「伝えたいこと」は、できるだけ一つにしぼりましょう。
- 誰に……例)家族、友人、先生
- 何を伝えたいか……例)本の面白さ、感動したところ、自分の想い
- 「伝えたいこと」をしぼることで、構成を立てやすくなります。
文章の構成
- 文章は、三つのパートに分かれることが多いようです(※三段落で書かなければならないという意味ではありません)。
- 【はじめ】
- この文章で「伝えたいこと」や、あらすじを、簡単に書きます。なお、あらすじの有無を学校から指定されることもあります。
- 【なか】
- 本に貼った付せんや、考えたこと、メモを元に、「伝えたいこと」をより詳しく書いていきます。
- 物語の内容と自分の体験を交えると、「伝えたいこと」の説得力が増し、生き生きとした作品に仕上がります。
- 物語で印象に残った場面や人物について書きましょう。また、それに対しどう感じたかを書きましょう。
- 関連する自分の体験を書きましょう。「いつ、どこで、誰が、どうした」から書き始めるとよいでしょう。
- 体験は、過去の思い出だけでなく、本を読んだ後に人に聞いたことや、調べたことでもよいでしょう。
- 体験の最後には、その体験を通して学んだこと・感じたことを、物語の内容と絡めながら書きましょう。
- 学んだことを実行するのはなぜ難しいのか、そのためにはどうすればよいのかといった、より現実に根ざした内容の段落を追加すると、深みが増します。
- 【おわり】
- 「伝えたいこと」をもう一度強調し、未来につながる決意や前向きなことばで締めます。