【実践ガイド】志望理由書作成の6ステップ

「志望理由書を書かなければいけないのはわかっているけれど、何から始めればいいのかわからない」――そんな声をよく耳にします。

本記事では、志望理由書完成までの具体的なプロセスを、6つのステップでご紹介します。

【準備段階】まずは方向性を確認しましょう

作業を始める前に、次の3点を確認してください。

  1. 「特別な経験」は必要ない:全国大会出場や生徒会長でなくても大丈夫です
  2. 「等身大の自分」が一番強い:背伸びした言葉より、面接で自然に話せる言葉が大切です
  3. 志望理由書は「物語」を作る作業:過去・現在・未来をつなげていきます

それでは、具体的なステップを見ていきましょう。

ステップ1:過去の経験を棚卸しする

「経験を振り返るための質問リスト」

まずは、これまでの経験を広く振り返ります。大きな実績でなくてかまいません。できれば親子など誰かと話し合いながら取り組みましょう。答えられるものだけで大丈夫です。

1. 夢中になったこと(部活、委員会、授業、趣味、何でもOKです)

  • 中学・高校で最も時間を使ったことは?
  • 気づいたら何時間もやっていた、ということは?
  • 人目を気にせず打ち込んだことは?

2. 「楽しかった」「嬉しかった」記憶

  • どんな時に達成感を感じた?
  • 人から感謝されたことは?
  • 自分でも成長を感じた瞬間は?

3. 「困った」「悩んだ」経験

  • 壁にぶつかったことは?
  • 人間関係で悩んだことは?
  • うまくいかなかったことから学んだことは?

4. 「なぜ?」と思ったこと

  • 疑問に思ったこと、不思議に感じたことは?
  • 社会や世界のニュースで気になったことは?
  • 授業で「もっと知りたい」と思ったテーマは?

聞き手の役割

もしあなたが聞き手なら、次のことを意識してください。

  • 聞き役に徹する:否定せず、まずは聞く
  • 小さなことも拾う:「それって面白いね」と反応する
  • 思い出を補助する:「あの時、こんなこと言ってたよね」と記憶を呼び起こす手伝いをする

このステップのゴール

  • 5〜10個の経験・エピソードをリストアップする(箇条書きでOK)

ステップ2:「気づき」と「考え」を掘り下げる

ステップ1で出てきた経験の中から、特に印象深いもの2〜3個を選び、深掘りします。

「気づきを掘り下げるための質問リスト」

各エピソードについて、次のことを考えてみましょう。できれば、誰かに答えを書き留めてもらいましょう。

1. その経験を通して、何に気づいた? 何を感じた?

  • できるだけ具体的に

2. なぜそう感じたのか?

  • 具体的な場面やきっかけは?

3. その気づきから、自分の考え方や行動は変わった?

  • 「量的な変化」(実績)ではなく「質的な変化」(内面の変化)を言語化

4. その経験は、今の自分にどうつながっている?

1. その経験を通して、何に気づいた? 何を感じた?

  • 例:「サッカー部の副キャプテンとして地区大会に出場した。その中で、チームワークの重要性と、自分の考えや思いを言葉にすることの難しさを感じた」

2. なぜそう感じたのか?

  • 例:「強いチームと試合をするときは、個人の力だけではなく、攻め方や守り方のイメージをみんなで合わせなければならない。しかし、自分の考えを言葉で伝えて理解してもらうことがとても難しかった」

3. その気づきから、自分の考え方や行動は変わった?

  • 例:「自分の考えだけでなく、相手の能力や考えを前提にして、話し合わなければならないことがわかった」

4. その経験は、今の自分にどうつながっている?

  • 例:「力を合わせて勝った時の嬉しさが自分にとってとても大切な思い出になった。将来は海外の人と協力しながら仕事をしてみたい」

聞き手の役割

  • 「なぜ?」「どう思った?」を優しく問いかける:問いただすのではなく、興味を持って問いかけましょう
  • 抽象的な答えには「例えば?」と具体例を引き出す:すぐに具体例が出てこなくても、時間をかけて待ちましょう
  • 言葉をメモする:このメモが、文章の材料になります

このステップのゴール

  • 2〜3個のエピソードについて、「経験→気づき→現在の思い」がつながった形で言語化できている

ステップ3:志望校の情報を集める

志望理由書で必要なことは、「なぜこの学校でなければならないのか」という必然性です。そのためには、志望校についてよく知らなければなりません。

情報収集の3つの方法

1. 公式情報を読み込む

  • 学校のウェブサイト
  • 募集要項
  • 学校案内パンフレット
☑ チェックするポイント
  • 教育理念・方針
  • カリキュラムの特色
  • 特別なプログラムや授業
  • 卒業後の進路実績

2. 実際に足を運ぶ

  • オープンキャンパス
  • 学校説明会
  • 文化祭・体育祭
☑ チェックするポイント
  • 在校生の雰囲気
  • 先生の話し方
  • 施設・設備
  • 「ここいいな」と感じたポイントをメモ

3. 複数校を比較する

  • 第一志望だけでなく、類似の学校も見る
  • 「違い」を言語化する
☑ チェックするポイント
  • それぞれの学校の独自性
  • 通いやすさ
  • 自分の性格と合いそうか

保護者の役割

  • 一緒にオープンキャンパスに参加する(ただし口出しは控えめに)
  • 「どう感じた?」と感想を聞く
  • 複数校を見る機会を作る(日程調整や交通手段のサポート)

このステップのゴール

  • 志望校の特色を具体的に挙げられる

ステップ4:「自分」と「学校」をつなげる

ここが志望理由書の最も重要な部分です。ステップ2で掘り下げた「自分の気づきや考え」と、ステップ3で集めた「学校の特色」をつなげます。

「つながりを確認する質問リスト」

自分の経験・気づきから見えてきたもの

  • 興味があることを書いてください:
  • 将来やりたいことを書いてください(漠然としていてもOK):
  • そのために必要だと思う力を書いてください:

 ⇩ ⇩ ⇩

志望校で学べること・身につけられること

  • 学校の特色:
  • 具体的なカリキュラムやプログラム:
  • 卒業後の進路との関連:

自分の経験・気づきから見えてきたもの

  • 興味があることを書いてください:(例)チームをまとめること
  • 将来やりたいことを書いてください:(例)いろいろな国の人と協力して何かをしてみたい
  • そのために必要だと思う力を書いてください:(例)英語やコミュニケーション能力、文化についての知識

 ⇩ ⇩ ⇩

志望校で学べること・身につけられること

  • 学校の特色:(例)グローバル化した社会に通用する人間を育てるという理念
  • 具体的なカリキュラムやプログラム:(例)英語を重視したカリキュラム、国際交流プログラム
  • 卒業後の進路との関連:(例)大学進学に必要な学力のサポート

☑ チェックポイント:「フィット」しているか?

志望校の選択では、自分の思いと学校側の思いがフィットしているかが大切です。

次の質問で確認しましょう。

  • 学校の教育理念と自分のやりたいことは合っている?
  • 学校の特色的なプログラムを具体的に挙げられている?
  • 「この学校でなければならない理由」が明確?

もし「なんとなく良さそう」というレベルなら、ステップ3に戻ってさらに情報を集めましょう。

聞き手・保護者の役割

  • 「この学校じゃなきゃダメな理由は何?」と問いかける
  • 他の学校でもできることなら、指摘する(厳しく聞こえますが、これが学校側の視点です)
  • 具体性をチェック:「国際教育」→「具体的にどのプログラム?」

このステップのゴール

  • 「私は○○という経験から△△を学んだ。将来□□をしたいので、貴校の◇◇(具体的なプログラム名)で学びたい」という文章が作れる

ステップ5:構成に落とし込んで書く

いよいよ実際に書く段階です。さまざまな書き方がありますが、最もオーソドックスな書き方は次の通りです。

基本構成(400〜800字程度を想定)

【冒頭】結論=目標を述べる(50〜80字)

「私の目標は、将来○○をすることです。そのために、貴校の△△学科(コース)を志望いたします。」

【本論】過去→現在→未来(300〜600字)

(1) 過去:経験とそこからの気づき(100〜200字)

  • 具体的なエピソード
  • そこから学んだこと・気づいたこと

(2) 現在:今の思い(50〜100字)

  • 現在どう考えているか
  • なぜその目標を持つようになったか

(3) 未来:学校での学びと将来の展望(150〜300字)

  • 学校の具体的なプログラム・カリキュラムと自分の目標の関連
  • そこで何を学び、どんな力を身につけたいか
  • 卒業後、それをどう活かしたいか

【結論】再度、志望の必然性(50〜80字)

  • 「以上の理由から、私にとって貴校は目標達成のための最適な環境であると確信しています。」

初稿を書くときのポイント

  1. 完璧を目指さない:まずは一通り書き切る
  2. 自分の言葉で書く:必要以上に背伸びした言葉は不要
  3. 具体的に書く:「国際理解」→「○○プログラムでの海外研修」

保護者の役割

  • 書いている間は見守る:横から口を出さない
  • 書き終わってから読む:途中で添削しない
  • まずは良い点を伝える:「この部分、よく書けているね」

このステップのゴール

  • ひとまず最後まで書き切る(完成度30〜50%でOK)

ステップ6:推敲する

初稿を1〜2日寝かせてから、推敲に入ります。

☑ 推敲チェックリスト

【一貫性チェック】

  • 過去→現在→未来がつながっている?
  • 途中で話題が飛んでいないか?

【具体性チェック】

  • 「ふんわり」とした抽象的な表現になっていないか?
  • 学校の具体的なプログラム名・カリキュラム名が入っている?
  • 「例えば?」と聞かれて答えられる内容か?

【自分らしさチェック】

  • 面接で自然に話せる言葉か?
  • きれいな言葉を並べすぎていないか?
  • 本人の価値観や考えが伝わるか?

【説得力チェック】

  • 学校の教育理念との整合性はあるか?
  • 熱意だけが空回りしていないか?
  • 「この学校である理由」が明確か?

推敲の進め方

1回目:本人が読み直す

  • 声に出して読んでみる
  • ひっかかる部分、言いにくい部分をチェック

2回目:保護者が読んで感想を伝える

  • 良い点を先に伝える
  • 「ここがわかりにくい」と感じた部分を質問形式で指摘
    • NG例:「この部分は抽象的だから直して」
    • OK例:「『グローバル人材になりたい』って、具体的にはどんなこと?」

3回目:第三者に見てもらう

  • 学校の先生
  • 塾の講師
  • 可能なら志望校を知らない人(客観的な意見がもらえる)

説得力を高める最終調整

説得力をより高めるには、目標に向けてすでに具体的に自分から動き始めていることを示せると良いでしょう。

可能であれば、次のような行動を追加し、文章に盛り込みます。志望理由書を書いている時点で始めても構いません。

  • オープンキャンパスに参加した感想
  • 学校の先生や在校生に質問したこと
  • 志望校の研究者の著作を読んだこと
  • 関連する分野の本を読んだこと

また、「現実の大変さや課題にも少し触れる」ことで、夢物語ではなく「歩いていける道」として示すことができます。

保護者の役割

  • 複数回の推敲を想定した スケジュールを組む(最低1週間は確保)
  • 一度にすべて指摘しない:1回の推敲で1〜2点に絞る
  • 子どもに考えさせる:答えを与えず、「どう思う?」と問いかける
  • 最終的には子どもの判断を尊重:100%納得できなくても、子ども自身が面接で話せる内容なら良しとする

このステップのゴール

  • 本人が面接で自然に語れる内容になっている
  • 一貫性・具体性・自分らしさがすべて揃っている
  • 学校の教育理念とフィットしている

よくある質問

Q1: 子どもが「書くことがない」と言います

A: ステップ1の振り返りを丁寧に行ってください。「大きな実績」を探すのではなく、「日常の小さな気づき」に焦点を当てます。「部活で補欠だった」経験からも、チームを支える役割の大切さや、努力を続ける力など、多くの学びがあります。

Q2: 複数の志望校があり、それぞれ理由書が必要です

A: 最初の1校を丁寧に作れば、2校目以降は修正で対応できます。ただし、各学校の特色に合わせた「カスタマイズ」は必須です。学校名と特色部分を変えるだけの「使い回し」は見抜かれます。

Q3: 将来の夢が決まっていません

A: 将来の目標がない場合は、それを志望校で探すためにどんな挑戦ができるか、志望校の教育活動について具体的に述べましょう。「まだ決まっていないからこそ、貴校の幅広いカリキュラムで探求したい」という姿勢も立派な志望理由です。

Q4: 保護者はどこまで手伝っていいのでしょうか?

A: 対話は積極的に、執筆は基本的に子ども主体で。考えを引き出す質問はどんどんしてください。ただし、親が文章を肩代わりして書いたり、大幅に書き直したりするのはNGです。面接で話せない内容になってしまいます。

まとめ:焦らず、一歩ずつ

志望理由書の作成は、お子さんが自分自身と向き合い、将来を考える貴重な機会です。6つのステップを、親子で対話しながら一歩ずつ進めてください。

保護者の皆さまへのお願い

  • 完璧を求めすぎないでください
  • お子さんの「等身大の言葉」を信じてください
  • プロセスを楽しんでください

志望理由書は、「その子の物語」です。華々しい実績や美しい言葉ではなく、その子が何を感じ、何を考え、どこへ向かおうとしているのか――その一貫性と誠実さこそが、合格への道を開きます。

お子さんが自分らしい志望理由書を完成させ、希望する進路を実現できることを心より願っています。