
幼稚園・保育園年長(5~6歳児)の子どもたちの学びは、楽しむことが何より大切です。体と心、そして社会性の発達を背景に、文字を覚える楽しさ、そして家庭での安心感を土台にした学びを目指します。また、読み聞かせや文字指導、五感を刺激する思考課題を通して、小学校入学に向けた学びの土台を築きます。
目次
学習のテーマ
- 楽しみながらメリハリよく学び、文字を覚える
心身の発達課題と社会的な課題

睡眠・食事・運動など、生活リズムを整え、「自分でできる」という自信を育んでいく時期です。幼稚園・保育園では、年⾧さんとして「お兄さん・お姉さん」としての意識を育み、小学校就学へ向けた準備が始まります。
体験したことと気持ちとのつながりを感じる力や、物事を記憶する力が高まります。たくさんの言葉を獲得し、自分の思いや身の回りのことを表現することができるようになります。日常的な会話や、絵本の読み聞かせなどを通して語彙を増やし、気持ちと言葉との結びつきをたくさん作ることが大切です。
家庭における安心感や自信を土台に、家庭外の「社会」の中でさまざまな経験をする中で、ルールや他者との関係の中で生じる葛藤に向き合いながら、望ましいふるまいを身につけ、家庭の中とは違った「自分」が育っていきます。
発達の個人差が大きいため、一人ひとりに合った接し方が重要です。
学びたい言語技術・取り組みたい思考課題・育みたい態度
- 読む
- 音読できる(易しい絵本・大きな文字・短い文)
- 書く
- 文字(ひらがな・かたかな)を学ぶ
- 考える
- 「五感」
- 話す・聞く
- あいさつができる
読み聞かせ・講師の話をしっかりと聴ける
おもしろかったところや初めて知ったことを話せる
ていねいな言葉がつかえる - 態度
- 課題を楽しみ、15 分~20 分程度はきちんと椅子に座っていられる
生活や体験に根ざした知的好奇心を育む
制作を通して表現し、ことばとつなげる
課題例
絵本の読み聞かせ

本に親しむ
絵本を好きになってもらうことが目標です。声と文字との結びつきを強くし、言葉と通してイメージ(表象)する力の育ちを促します。物語と「知る本」とをバランスよく楽しめるように、読み聞かせや本の貸し出しをしていきます。
物語
文章量が少なく、理解しやすい内容の作品を楽しみます。安心できる物語・繰り返しがあり、音やリズムを楽しむものや先が予測しやすいもの・シリーズもので、登場人物へ親しみを感じやすいものなど。
自然や科学、社会について知る本
フレーベル館の「しぜん」シリーズを中心に読み聞かせをします。生活に根ざした知識の土台を作り、知的好奇心を育んでいきます。
ブックトーク
ブックトークを通して、おもしろかったところや初めて知ったことについて話します。
文字指導

鉛筆のプリント・めいろ
鉛筆を正しく持って、扱えるようになることから始めます。
ひらがな・カタカナ
『なぞらずにうまくなるひらがな練習帳』(桂聖著/実務教育出版)、『なぞらずにうまくなるカタカナ練習帳』を使用します。文字の形の特徴をつかみながら練習していきます。20 分で 3 つ分くらいの文字が目安です。
思考課題
「五感」
「見る」「さわる」「聞く」「かぐ」「味わう」といった感覚を働かせ、言葉(単語)にします。
観察・ミッション(体験)
五感を使った観察や、作品制作に取り組みます。自分の感覚を働かせて、感じたり、工夫したりする体験の機会を作り、ことばにつなげていきます。
学習サポートのポイント

メリハリある時間を過ごせるように工夫する
1 つの課題を 15~20 分程度取り組むごと、休憩を取ります。スモールステップにすることで、目的意識を持ち、集中力を発揮することができます。また、授業の準備、学習時間、休憩、片付けなど、メリハリのある過ごし方を意識します。
楽しんで過ごせるよう見守る
「遊び」と「学び」を自然に橋渡ししていきます。観察や制作課題にも取り組むことで、五感に訴え、言葉だけではない創意工夫や表現を大切にします。
この時期の困りごとへのアプローチ
ひらがな・カタカナがなかなか書けない
焦らないで見守ることが大切です。この時期は個人差が大きいため、お子様のペースに合わせて進めましょう。文字への抵抗感をなくすため、文字の絵本、文字を使ったゲーム、お風呂での文字シートなど、楽しい方法で文字に親しむ機会を増やしましょう。筆記についても、まずは運筆練習から始め、線をなぞる、迷路を解くなど、書くこと自体に慣れることから始めましょう。
文字と音の関連は重要です。絵本の読み聞かせを通して、文字と音を結びつける経験を増やしましょう。指で文字を追いながら読むのも効果的です。
小さなことでも「読めたね!」「書けたね!」と褒めることで、意欲を高めます。
小学校の授業にスムーズに移行できるか不安
早寝早起き、決まった時間に食事をするなど、規則正しい生活習慣を意識しましょう。一日の予定を簡単に伝えたり、予定表を一緒に作ったりすると、見通しを持つ力が養われます。
絵本の読み聞かせや、大人の話に耳を傾ける時間を意識的に作ることで、話を聞く姿勢をつくります。
絵を描く、パズルをする、積み木などで遊ぶなど、集中して座る時間を少しずつ増やします。タイマーを使って時間を意識させるのも良い方法です。
並行して、学校説明会に参加したり、先輩保護者に話を聞いたりすることで、小学校生活の具体的なイメージを持つことができます。
学習習慣ができるか不安
学習習慣は、生活全体の習慣の一部です。短時間でも良いので、毎日決まった場所で、決まった時間に学習する習慣をつけましょう。リビングなど、目の届く場所がおすすめです。まだ一人で課題に取り組むことは難しいため、親や講師が一緒に課題に取り組んだり、見守ったりすることで、安心して取り組むことができます。
集中できる時間を意識させるために、タイマーを使って区切りましょう。また、課題が終わったらシールを貼るなど、小さなご褒美を用意するのも効果的です。
最初から完璧にできなくても、できたことを認め、励ますことが大切です。
言葉の発達がゆっくりに感じる
日常生活の中で、お子様に優しくたくさん話しかけましょう。「これは何?」「どう思う?」など、言葉で答える機会を作ることが大切です。絵本の読み聞かせは、さまざまな言葉や表現に触れるよい機会です。読み聞かせの後に、内容について話すのも効果的です。しりとり、なぞなぞ、かるたなど、言葉を使った遊びを取り入れましょう。お子様が聞き取りやすいように、ゆっくりと話すことを心がけましょう。
友達とのトラブルが多い
友達に声をかける言葉や、仲間に入れてもらう時の言い方などを具体的に教えることも大切です。叩いたり、奪ったりするのではなく、言葉で伝えることの大切さを教えましょう。友達の大切さや、仲良くすることの楽しさを描いた絵本などを読み聞かせするのも良い方法です。
子どもたちは、まだ自分の気持や考えをどう言葉にすればいいのかわからないことがあります。会話の中で、お子様の見ているもの・感じていることを言葉にして返してあげるのも効果的です。