ことばと能力の関係 ~個性と成長、受験に立ち向かう力~

その子の個性を活かす

pencils

冒頭で、「頭の良さにはさまざまな側面がある」とお伝えしました。子どもたちは、実にたくさんの可能性を秘めています。絵がうまいこと、自分の心を注意深く追えること、体を動かすことが得意なこと、それらはすべて生きていくための力です。学校では、国語の時間は言語能力、体育の時間は運動能力と、評価の視点が分かれていますが、それは非常にもったいないことです。体を動かす演劇を通して物語を味わってもよいですし、体の動きをことばにすることで、スポーツの上達のヒントを探ってもよいのです。その子にはその子なりの視点があり、個性があります。自分が好きだと思うことを学びや理解の原動力にすることは、その子の隠された可能性を一気に拡げることになります。

教室では、一斉授業はしていません。それは、講師が生徒一人ひとりをじっくりと観察し、最適な学びのアプローチを探るためです。生徒たちが教室を好きだと言ってくれる理由は、自分の個性や考え方を認めてくれる大人たちが、じっくりと向き合ってくれることにあるようです。

自律的な成長と中学受験

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これまで、たくさんの受験生とそのご家族を見てきました。受験では、その子が「疲れていく」パターンと、「成長していく」パターンがあります。

「疲れていく」パターンでは、そもそも受験に求められる厳しさに成長が追いついていないことが多いようです。

じっくりと本に向き合い、ことばの用い方や考え方についての練習をすることで順調に成長していくはずなのに、その成長のタイミングが少し遅かったために、受験という大きな波にもまれて自信を喪失してしまうのです。運良く合格すればまだよいのですが、不合格になってしまえば、大きな痛手として心に残ってしまいます。特に、大手の進学塾の厳しいスケジュールや周囲との差が明確になるようなやり方は、子どもの心を追い詰めることになります。

必要なのは、無理に手をつかんで引き上げることではなく、その子と見ているもの・考えていることを共有した上で、読み方と考え方を丁寧に指導し、自信をつけてあげることです。そして、受験に向かうための覚悟が固まるのを待つことです。

逆に、受験によって「成長していく」パターンもあります。

多くの場合、そうした子は自分で勉強の時間を決め、テストの予定を把握しています。また、受験のさなかでも、読書をやめません。家族も、こっそり本を読んでいるのを黙認しているようです。よく質問をし、納得がいかなければ「模範解答が間違っている」と文句を言ったりします。ご家族は、あくまでも本人の頑張りを支えてあげている、というスタンスでいます。

このようになるためには、受験までに、学習に対する態度が育っている必要があります。教えられるだけでなく、自ら考える姿勢、よりよいやりかたを探す姿勢、そうした自律的な態度が、受験にしっかりと向き合い、結果に関わらず、成長の糧にできる子の特徴です。

ことばを使って考える習慣は、すべての教科の理解を容易にするのはもちろん、自分から課題に立ち向かうたくましさを育てていきます。

リテラでしか学べない受験対策

教室では、無理な受験対策はしていません。しかし、受験に立ち向かえる力を持っている場合、学習状況に合わせて、個別のカリキュラムをデザインします。以下に記載するのは、全体の枠組みです。志望校や状況に応じて、必要な対策を行います。

長文読解

長文読解に必要な「分析的な読み」の視点を学びます。

より深いテーマの理解や物語の構造の把握につなげるための「読み」は、適切な指導と機会がなければ、身につきません。過去問を繰り返すだけでは、意味がないのです。国語は、文章のどこかにある答えを探すのではなく、心の中に文章の内容をイメージし、物語や思考を追体験することが重要です。こうした共感・共有をベースに、物語の型の理解や内容についてのディスカッションなどを通し、楽しむためだけの読み方を超えた、「分析的な」読み方を学びます。

記述

正しい書き言葉と表現を学びます。

お子様によって、学習状況や言語能力は異なります。書いた文章に直接添削を加えるだけでなく、お一人おひとりの文章レベルに合わせた対策を行うことで、「どのように書けばいいか」がわかるようになります。また、出題者の意図を読み取るための「設問文の読解」も、重要な視点です。

小論文・都立中高一貫校

論理的な構成の立て方と、テーマに即したエピソードの書き方を学びます。

論理的な文章を書くためには、論理に必要な要素と構成の立て方を知る必要があります。また、テーマに即して自分の体験を書き表す場合、物語の型も必要になります。これらの技術は小論文や都立中高一貫校の作文課題で求められますが、学校では深く学べないことのひとつです。また、「自分を描く」ためには、自分を見る「もうひとりの自分」が必要なのですが、この視点が育っているかどうかは、「自我」の発達と関わる奥の深い問題です。上辺だけの作文ではなく、誠実に自分に向き合うことも、指導のポイントとなります(効率中高一貫校受検について、より詳しくは「公立中高一貫校と言語技術」をご覧ください)。