2025年読書感想文課題図書『ふみきりペンギン』リテラの先生の読書感想文

【講師コラム】大人も書いてみよう、読書感想文

こんにちは、リテラ「考える」国語の教室の講師、黒木里美です。

2025年青少年読書感想文コンクールの課題図書『ふみきりペンギン』(おくはら ゆめ作・絵)を読んで、わたし自身が感想文を書いてみました。

本を読んだときに湧き上がってきた思いを形にしたくて書いたものです。 これは決して子どもたちの「見本」になるようなものではありません。

むしろ、一人の大人として本と向き合い、自分自身の経験と重ね合わせて書いた素直な感想です。 でも、この感想文を読んでくださった方々が、「読書感想文ってこんな風に書いてもいいんだ」と感じていただけたら嬉しいです。大人の本音の感想が、子どもたちが自分の言葉で書くためのヒントになれば、という願いを込めています。

ぜひ、保護者の皆さん、読書感想文を指導される先生方も、一度子どもたちと同じ本を読んで感想文を書いてみませんか?子どもたちと一緒に「書く」体験をすることで、新たな発見があるかもしれません。 それでは、わたしの読書感想文をご覧ください。

境界線の向こう側に広がる世界

「ふつう」という言葉は、時に私たちを縛る鎖になることがあります。おくはらゆめさんの「ふみきりペンギン」を読んで、この言葉の持つ重みと、それを超えて広がる世界の豊かさについて考えさせられました。

物語に登場する四人の子どもたちはそれぞれ、踏切のペンギン、公園の遊具である白いヘビ、鏡の中のライオン、図書館のフクロウという不思議な存在と出会います。彼らは最初、「ふつう」ではないことに不安を感じていました。左利きであることを気にするゆうと、友達に執着するるり、自分の好きなものを忘れかけていたななこ、あだ名で呼ばれることを嫌がるそうすけ。どの子も、「ふつう」という見えない壁に囚われていたのです。

私はこの本を読みながら、小学生の頃に体験した不思議な出来事を思い出しました。夏の夕暮れ時、急いで大きな歩道橋を渡り、階段を駆け下りて百代橋のたもとに着いたところで、私に話しかけてきた見知らぬ女の子。彼女は私のことを「おねえちゃん」と呼び、「知っている」と言って一緒に帰りたいと言いました。浅黒い肌に大きなクリクリの目、たっぷりの黒髪を三つ編みにした外国の子のような雰囲気を持つその年下の子は、私を自分の家まで案内しましたが、ドアをノックすると突然姿を消してしまったのです。隣の家の人によれば、その部屋には誰も住んでいないとのこと。あの子は一体何だったのか、今でも時々考えることがあります。

この体験は、「ふみきりペンギン」の世界と不思議なほど重なります。ゆうとがペンギンと出会う踏切や、るりが遊ぶ公園の白いヘビの遊具、ななこがライオンと話す古い鏡、そうすけがフクロウを見つける図書館。これらの場所はすべて、日常と非日常の「境界線」なのではないでしょうか。

踏切は列車が通過する瞬間、現実と別の世界をつなぐ扉となります。私にとっての「百代橋」も、知らない女の子との出会いを通して、見えない世界へのゲートウェイとなったのかもしれません。おくはらさんは、こうした境界線の存在を通して、子どもたちに「ふつう」の枠を超えた世界があることを優しく伝えているように思います。

「ふつう」とは、もしかしたら、人それぞれの中にある感覚に過ぎないのかもしれません。誰もが少しずつ違っていて、その「違い」こそが自分らしさ。「ふみきりペンギン」の子どもたちは、不思議な体験を通して、他者と自分の違いを受け入れ、自分自身を肯定する力を得ていきます。

私も今、あの女の子との出会いを思い出すたび、「お母さんに会えたかな、ご飯食べたかなあ」と不思議と心配してしまいます。それは一見「ふつう」ではない感情かもしれませんが、私という人間を形作る大切な部分なのでしょう。

おくはらさんは、ファンタジー要素を取り入れながらも、子どもたちの繊細な心の動きをリアルに描いています。それは読者である私たちに、「ふつう」とは何か、「自分らしさ」とは何かを問いかけているのだと思います。

踏切を渡り、公園で遊び、古い鏡を覗き、図書館の隅で出会う不思議な存在たち。それらは私たちの中にある想像力や感受性、そして「違い」を恐れずに受け入れる勇気を象徴しているのではないでしょうか。

この本を読んで、私は自分の中にある「境界線」についてまた考えるようになりました。「ふつう」という言葉で自分を縛るのではなく、その向こう側に広がる豊かな世界に目を向けていきたいと。そして、あの日の不思議な女の子のように、私自身も「境界線」を越える不思議な存在として、子どもたちの記憶の中で生き続けることができたら、それもまた素敵なことだと思い願っています。

読書感想文を書こう!

対話をベースに、世界で一つの読書感想文を書き上げましょう!

書き上げるのが大変な読書感想文。でも、読書とは本来、楽しいもの。読書感想文を素敵な学びの機会に変えてみませんか?

対象学年:小学生・中学生・高校生

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この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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カテゴリー: 授業と生徒作品

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