2025年読書感想文課題図書『バラクラバ・ボーイ』リテラの先生の読書感想文

【講師コラム】大人も書いてみよう、読書感想文

こんにちは、リテラ「考える」国語の教室の講師、黒木里美です。

2025年青少年読書感想文コンクールの課題図書『バラクラバ・ボーイ』(ジェニー・ロブソン著)を読んで、わたし自身が感想文を書いてみました。

本を読んだときに湧き上がってきた思いを形にしたくて書いたものです。 これは決して子どもたちの「見本」になるようなものではありません。

むしろ、一人の大人として本と向き合い、自分自身の経験と重ね合わせて書いた素直な感想です。 でも、この感想文を読んでくださった方々が、「読書感想文ってこんな風に書いてもいいんだ」と感じていただけたら嬉しいです。大人の本音の感想が、子どもたちが自分の言葉で書くためのヒントになれば、という願いを込めています。

ぜひ、保護者の皆さん、読書感想文を指導される先生方も、一度子どもたちと同じ本を読んで感想文を書いてみませんか?子どもたちと一緒に「書く」体験をすることで、新たな発見があるかもしれません。 それでは、わたしの読書感想文をご覧ください。

心の扉を開く鍵 —相手を知ろうとする勇気—

私は幼稚園の年長さんで引っ越しを経験しました。きれいで広い新しい家に住めることは嬉しかったのですが、同じマンションの子どもたちのことを怖く感じていました。特に年上の子たちは乱暴そうに見え、「ボールをぶつけられたらどうしよう」と不安に思い、エレベーターを一緒にのるのさえ避けていたほどです。

「バラクラバ・ボーイ」を読んで、主人公の「ぼく」がトミーに対して抱いた不安や好奇心が、私自身の経験と重なって見えました。南アフリカの学校に転入してきたトミー。彼の特徴は顔を覆うバラクラバ帽をいつもかぶっていることでした。「なぜ帽子をかぶっているのか」「下に何が隠されているのか」という疑問は、私が新しい環境で出会った人々に対して感じた不安と同じものだったのです。

私の場合は、幼稚園で友達ができ、その子と敷地内の公園で遊ぶようになったことで、マンションの子たちとも少しずつ知り合うことができました。名前を知り、何階に住んでいるかを知り、次第にマンション自体が好きな場所に変わっていきました。友達の家に招待されたときの驚きも忘れられません。間取りは同じなのに、部屋の様子は全く違い、「自分の家もこんな風にしたいな」と思えるほど素敵だったのです。

この体験は「バラクラバ・ボーイ」のクラスメイトたちが、トミーのことを知るうちに友情を育んでいく過程と似ています。物語の中で印象的だったのは、クラス全員がバラクラバ帽をかぶるシーンです。「とつぜん、まわりが気にならなくなったんだ。どんなにじろじろ見られようが、平気だった。まるでバラクラバに守られているみたいに、はずかしくもないし、気楽なんだ。これって、みんな、わかるよな?!」というトミーの言葉に、クラスメイト全員が共感する場面は胸を打ちました。

小学2年生の夏休み明けに、私のクラスにも転校生がやってきました。日本人でしたが、それまでずっとカナダで暮らしていたそうです。当時は珍しい黒と緑のチェック柄のランドセルを背負い、横にはミニランドセルがついていました。彼が転校してきて数日たったとき、たまたま隣の席になったので、「可愛いランドセルだね」と声をかけたところ、彼は突然、「そんなに珍しいのかよ!変なのかよ!」と怒り、泣き出してしまいました。褒めただけなのに、なぜだろうと驚き、私は恐くなってしました。

もしかしたら「可愛い」という言葉が良くなかったのかもしれないと思いました。男の子なのに「可愛い」と言われて嫌だったのかな?もっと「かっこいい」とか「いい色だね」とか言うべきだったのかもしれない、と後になって考えました。

私たちの間に先生が入ってくれ、彼が落ち着いた後、理由を教えてくれました。転校して数日しかたっていないのに、そのランドセルのことで嫌な思いをしていたのだと。日本に帰ってきたばかりで、みんなが黒や赤、紺色のランドセルを使っている中、彼のチェック柄のランドセルは目立っていて、「外国のランドセル」と言われたり、時には「女の子みたい」とからかわれたりしていたようです。

私は再び「いいランドセルだよ」と声をかけると、彼はまだ少し不機嫌そうでしたが「ありがとう」と俯きながら答えてくれました。私の言葉が届いたのかな、と嬉しく思いました。

その後も彼とは何度か同じクラスになりました。彼は演劇では誰もやりたがらない役を「面白そうだから」と率先してやったり、班やクラスの厄介事を引き受けたりする心の広い子でした。そして6年生の最後まで、あのチェック柄のランドセルを使い続けていました。ランドセル置き場でも一目で彼のものとわかるそのランドセルは、彼の個性の象徴のようで、彼の生き方とともに、大人になった今でも鮮明に覚えています。

「バラクラバ・ボーイ」のトミーの秘密が明かされたとき、私は本当に驚きました。バラクラバ帽の下に隠されていたのは、実はトミーが女の子だったという事実。その意外な展開に、私は自分の中の「決めつけ」に気づかされました。物語の中で、トミーの真実を知った後もクラスメイトたちの友情が変わらなかったことがうれしかったです。ジェニー・ロブソンはこの物語で、外見の違いだけでなく、私たちが無意識に持つ「男の子」「女の子」という枠組みさえも超えた、真の理解と友情の大切さを教えてくれます。

私たちは誰でも、見慣れないものや理解できないものに対して不安や恐れを抱きがちです。しかし、その「違い」を知り、理解しようとする勇気を持つことで、新たな友情や発見が生まれるのだと思います。幼い頃の引っ越しの経験も、転校生との出会いも、そしてこの「バラクラバ・ボーイ」の物語も、私にそのことを教えてくれました。見た目や第一印象を超えて、相手を知ろうとする心の大切さを、これからも忘れないでいたいと思います。

読書感想文を書こう!

対話をベースに、世界で一つの読書感想文を書き上げましょう!

書き上げるのが大変な読書感想文。でも、読書とは本来、楽しいもの。読書感想文を素敵な学びの機会に変えてみませんか?

対象学年:小学生・中学生・高校生

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この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

カテゴリー: 教育コラム, 授業と生徒作品

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