【2026年読書感想文特集】『ミシュカ』エドワルト・ファン・デ・フェンデル、アヌッシュ・エルマン(小学校高学年向け課題図書)

本の紹介

ロヤは、オランダに住む9歳の女の子。3歳のときに生まれ故郷のアフガニスタンを離れ、ようやく「ずっといていい家」で暮らし始めます。でも、なにかが足りない気がする……。
「家にはふつう、動物がいるもんだよ」
そうして、白いうさぎ「ミシュカ」が、家族の一員となります。

愛する家族、そして「ミシュカ」と暮らすロヤ。やさしい日々の中で、閉ざされていた旅の記憶のとびらが、ゆっくりと開き始めます。

本のテーマ

「てんとうむしメソッド」で考えよう

ロヤは、アフガニスタンからの亡命の旅のことを知りたいと思います。
しかし、自分では、旅のことを思い出せません。

そんなロヤですが、最後には、クラスの前で、これまでのことや、ミシュカのことを話そうとします。

この結末につながるために、ロヤを支えたものはなんでしょう。

考えるヒント

  • ミシュカが逃げ出したとき、家族全員が素早く、団結して動いたのは、彼らがかつてどんな経験をしてきたからだと思いますか?
  • ロヤは一回目の発表当番のとき、泣いて発表を続けられなくなってしまいました。その後、兄さんたちが学校に来てくれると聞いた時に、さらに激しく泣き出したのは、どうしてだと思いますか?
  • ミシュカが自分のベッドでおしっこをしたとき、ロヤはどんな気持ちになったと思いますか?

タイプ別:読み方・書き方

あなたはどのタイプ? 読書感想文の取り組み方がわかるタイプ診断

タイプ別に、読書感想文の読み方・書き方をご紹介します。まずはお子様またはご自分のタイプを診断しましょう。

各タイプのくわしい解説は、「あなたの子はどのタイプ? 読書感想文の前にやってみたい「4タイプ診断」」をご覧ください。

作家タイプ

作家タイプのお子さんは、登場人物の気持ちや、その奥にある意味を考えるのが得意です。「このお話は何を伝えたいのだろう?」と、テーマまで自然に考えられる力を持っています。また、自分の経験をふり返りながら考えることができるため、深い感想文を書く力があります。

作家タイプの子の扉を開く質問

  • ロヤは、発表当番で泣いた後、自分がずっと強くなったように感じています。どうして泣くことが強さにつながったのだと思いますか?

作家タイプの子は、一見マイナスのできごとからも、プラスの意味を導き出すことができます。ロヤが泣くことのできた意味を考えてみましょう。

研究者タイプ

研究者タイプのお子さんは、物事を「どうしてだろう」と考えるのが得意です。できごとをそのまま受け取るのではなく、原因や理由を知ろうとする力があります。「なぜこうなったのか」「どうすればよかったのか」と、順番に整理して考えることができるタイプです。

研究者タイプの子の扉を開く質問

  • ロヤの一家は、故郷のアフガニスタンから逃れなければならなくなりました。アフガニスタンで何が起こったのか、調べてみましょう。

研究者タイプの子は、ものごとの原因や理由まで考えることができます。後述するアフガニスタンの抱える問題について考え、わかったことや感じたことを書いてみましょう。

探検家タイプ

探検家タイプのお子さんは、物語の出来事や展開を楽しむのが得意です。「次はどうなるの?」と、お話の流れを追いながら読む力があります。

登場人物の行動や、起きた出来事に興味を持ち、自分もその中にいるような気持ちで読めるタイプです。

探検家タイプの子の扉を開く質問

  • ミシュカがいなくなったとき、ロヤはとても不安になりました。あなたも、大事にしていたものがなくなったり、壊れたりして、自分の心の一部がなくなったみたいに感じたことはありますか? そのとき、どうやって元気を出しましたか?

探検家タイプの子は、登場人物と自分を重ねることができます。ロヤにとってのミシュカのように、自分の大切なものについて書いてみましょう。

魔法使いの弟子タイプ

魔法使いの弟子タイプのお子さんは、物語を「いっしょに体験する」ように読むタイプです。

登場人物と同じ気持ちになったり、「いいな」「やってみたい」と感じながら読むことができます。まだ自分の考えを言葉にするのはむずかしくても、感じたことはしっかり心の中にあります。

魔法使いの弟子タイプの子の扉を開く質問

  • もしあなたの家にミシュカがいたら、どんなことを話してあげたいですか?

魔法使いの弟子タイプの子どもたちは、本の内容を自分につなげることが大切です。そのときに役立つ質問が「もし~なら」。具体的な状況を設定することで、発想しやすくなります。ロヤが自分の旅のことをミシュカに話したように、もし自分ならどんなことを話したいか、考えてみましょう。

読書感想文の具体的なステップ

世界でひとつの読書感想文の書き方

読書感想文を、3時間ほどで書き上げるステップをまとめています。お子さまご自身のことばを、小さな断片からだんだんと大きくふくらませていき、まとめあげていきます。ありきたりな作文ではなく、今しか書けない、世界でひとつの読書感想文を書き上げましょう。

理解を深めるために

アフガニスタンの難民問題

アフガニスタンでは、40年にわたる紛争、経済危機と貧困の拡大、地震・洪水や干ばつなどの自然災害により、何百万人もの人々が命や生活を脅かされています。さらに、2026年には隣国パキスタンとの対立により、国内に避難する人々が急増するだけでなく、イラン・パキスタンなどから帰還を余儀なくされた人々も、深刻な危機にさらされています。

ロヤの一家は、自由な考え方が許されなくなったアフガニスタンから、オランダに亡命しました。その背景には、アフガニスタンの政情の変化があります。

1979年、ソ連がアフガニスタンに軍事介入しました。不安定な政情が続く中、治安の回復を掲げて台頭してきたのがイスラム原理主義組織タリバンでした。2001年、米国同時多発テロをきっかけにタリバン政権は一度崩壊しましたが、2021年から駐留米軍の撤退が進むと、タリバンは再びアフガニスタンの実権を掌握しました。

タリバンによって治安は改善されたという見方もありますが、タリバンはシャリア(イスラム法)に基づく厳格な支配を強化しており、音楽や娯楽の制限だけでなく、特に女性の教育・就労・移動の制限や、服装の規定などの監視を強めています。このことから、国際社会から人道支援以外の開発援助(長期的なインフラ整備など)を得にくく、アフガニスタンの多くの住人は依然として深刻な人道危機にさらされています。

難民問題について調べてみよう

次のリンクは、アフガニスタンの難民を支援する団体による解説ページです。今何が起こっているのか、困難な状況にある人々にどのような支援ができるのか、考えてみましょう。

調べる際は、できるだけ複数の専門的な情報源に触れるようにしてください。

より深くテーマを考えるために:リテラの読みかた

閉ざされた記憶を開く、白いうさぎの魔法

オランダで「ずっといていい家」を手に入れた9歳のロヤ。しかし、ロヤは何かが足りない気がします。故郷アフガニスタンを離れて経験した、半年に及ぶ亡命の旅。当時の3歳という年齢を考えれば、あまりよく覚えていないというのは無理もないことです。しかし、過酷な旅の体験は、あったはずの時間そのものにふたをしてしまいました。それは、ロヤの心を守るためだったと考えられます。

「泣かない子」ロヤと、旅のルーティン

ロヤは「一度も泣いたことがない」と自負しています。それは強さというより、泣いてしまえば壊れてしまうほどの状況を生き抜くための、生きるための本能だったのでしょう。旅の途中、荷物の数を数え続けたロヤや、行く先々のトイレを掃除し続けた兄のナヴィッド。それらは、明日をも知れぬ不安定な移動の中で「自分」を保つための切実な儀式でした。燃やさざるを得なかった写真は、そのままロヤの失われた記憶と重なります。

ミシュカという鏡:守る存在から、救われる存在へ

「家には動物がいるもの」という願いで迎えられた白いうさぎのミシュカ。ロヤにとってミシュカは、自分が守るべき小さな命でした。しかし、ミシュカが脱走し、それを取り戻すために家族が団結して奔走する中で、物語は「家族が失ったものを取り戻す旅」へと変貌します。「人を信用できない」スラッハモーレンさんからミシュカを取り戻した鍵は、動画に収められた、家族とミシュカの絆でした。それは、かつて燃やしてしまった「記憶」の代わりとなり、家族のルーツを肯定する力となります。

安心して「泣ける」ということ

物語のクライマックス、学校での発表当番の最中、ロヤは突然涙が止まらなくなります。それは悲しみではなく、抑え込んできた過去の自分と、今の自分がようやくつながった証でした。 「ミシュカは、わたしたちの旅を知りたかったから逃げたんだ」 そう解釈することで、ロヤは自分の過酷な過去を、今につながる家族の歴史として受け入れます。ミシュカが安心できる場所でおしっこをしたように、ロヤもまた、安心できる場所で泣くことができるようになったのです。

この物語は、単なる難民の記録ではありません。家族の深い愛情に守られながら、止まっていた時間が再び動き出し、本当の意味で「自分の人生」を歩み始める少女の、静かで力強い再出発の物語です。

2026年 読書感想文課題図書のページ

随時更新していきます。

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この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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カテゴリー: ブックレビュー, 読書感想文

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