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目次
本の紹介
「この人の言うことは、絶対に正しい」そう思ったことはありませんか?
リヒトにとって、それは祖母の節さんでした。節さんは、いつも正しくて、迷わない人。まるで神様のような存在です。
そんな節さんが、最期に残した一通の封筒。中身はわからないまま――。
中学受験を控えた冬休み。本来なら勉強に集中するはずの時期に、リヒトは「苦手なあいつ」マサムネと一緒に、ドイツへ向かうことになります。
光あふれるクリスマスマーケット、見知らぬ街の風景や人との出会い。旅の中で、リヒトの見ている世界は、少しずつ変わっていきます。
本のテーマ
「てんとうむしメソッド」で考えよう

リヒトは、「ぼくは正しい大人になりたい」と思い、人には見えている一面しかないと考えています。
しかし、旅を続けるうち、正しさだけでは理解できない節さんのさまざまな面を知り、「本当の節さんってなんなんだ?」と考え始めます。
そんなリヒトですが、最後には、人の内面に興味を持ち、節さんの姉であるレイさんに、また会いたいと自分の言葉でメッセージを送ります。
この結末につながるために、リヒトが変わったのはどんなところでしょう。
考えるヒント
- 知識だけでなく、オランダやドイツを実際に旅することには、リヒトにとってどんな意味があったと思いますか?
- 最後、「節さんのことがわからない」と感じたとき、リヒトはどんな気持ちになりましたか?
- 本当のことがわからないからこそ、リヒトが大切にしたいと思ったことは、何だと思いますか?
タイプ別:読み方・書き方
あなたはどのタイプ? 読書感想文の取り組み方がわかるタイプ診断
タイプ別に、読書感想文の読み方・書き方をご紹介します。まずはお子様またはご自分のタイプを診断しましょう。

各タイプのくわしい解説は、「あなたの子はどのタイプ? 読書感想文の前にやってみたい「4タイプ診断」」をご覧ください。
作家タイプ

作家タイプのお子さんは、登場人物の気持ちや、その奥にある意味を考えるのが得意です。「このお話は何を伝えたいのだろう?」と、テーマまで自然に考えられる力を持っています。また、自分の経験をふり返りながら考えることができるため、深い感想文を書く力があります。
作家タイプの子の扉を開く質問
- 節さんは、なぜマサムネではなく、リヒトに封筒をたくしたのでしょうか?
作家タイプの子は、はっきりと書かれていないことや、正解のないことも、自分の想像で補うことができます。節さんの人生や自由に生きるレイに対する思いをふまえ、リヒトに封筒をたくした理由を、自分なりに考えてみましょう。
研究者タイプ

研究者タイプのお子さんは、物事を「どうしてだろう」と考えるのが得意です。できごとをそのまま受け取るのではなく、原因や理由を知ろうとする力があります。「なぜこうなったのか」「どうすればよかったのか」と、順番に整理して考えることができるタイプです。
研究者タイプの子の扉を開く質問
- 「表に出てる姿がその人のすべてだ」というリヒトの考え方は、正しいと思いますか、それとも違うと思いますか? 両面から考えてみましょう。
研究者タイプの子は、ものごとを論理的に考えるのが得意です。どちらかといえば、この物語の主人公「リヒト」に似ているかもしれません。「表に出てる姿がその人のすべて」という考え方について、「正しい」と思うところと、「違う」と思うところ、両方から考えてみましょう。
探検家タイプ

探検家タイプのお子さんは、物語の出来事や展開を楽しむのが得意です。「次はどうなるの?」と、お話の流れを追いながら読む力があります。
登場人物の行動や、起きた出来事に興味を持ち、自分もその中にいるような気持ちで読めるタイプです。
探検家タイプの子の扉を開く質問
- あなたも、友達や知り合いの意外な一面にふれたことはある?
探検家タイプの子は、本の内容を自分に引きつけるのが得意です。リヒトが節さんのさまざまな面を知ったように、自分の身の回りにいる人の意外な一面を知ったとき、どんな風に感じたかを書いてみましょう。
魔法使いの弟子タイプ

魔法使いの弟子タイプのお子さんは、物語を「いっしょに体験する」ように読むタイプです。
登場人物と同じ気持ちになったり、「いいな」「やってみたい」と感じながら読むことができます。まだ自分の考えを言葉にするのはむずかしくても、感じたことはしっかり心の中にあります。
魔法使いの弟子タイプの子の扉を開く質問
- リヒトの旅の中で、あなたが見てみたい・体験してみたいと思ったものはなんですか?
魔法使いの弟子タイプの子どもたちは、本の内容を自分につなげることが大切です。その場面でリヒトが思ったこと・感じたことと、自分を重ねることで、リヒトの心の変化を感じることができます。
読書感想文の具体的なステップ
世界でひとつの読書感想文の書き方

読書感想文を、3時間ほどで書き上げるステップをまとめています。お子さまご自身のことばを、小さな断片からだんだんと大きくふくらませていき、まとめあげていきます。ありきたりな作文ではなく、今しか書けない、世界でひとつの読書感想文を書き上げましょう。
理解を深めるために
旅の手触りを、一緒に
この作品は、旅そのものの手触りを丁寧に描いているところも魅力です。クリスマス・マーケットの食べ物、乗り物での移動、ホテルの夜、荷造りの様子——。
そうした場面を味わいながら読むことで、リヒトと一緒に旅をしているような感覚が生まれます。リヒトとマサムネがドイツで立ち寄った場所を確認しましょう。
ケルン大聖堂
外観
ドイツ・ケルンにある世界遺産で、ゴシック様式の建築物としては世界最大です。

リヒターのステンドグラス
大聖堂南側の窓には、ドイツの芸術家ゲルハルト・リヒターのデザインによるステンドグラスがあります。他のステンドグラスは、聖書のシーンなど具体的なものを表していますが、このステンドグラスは72色の四角形が並んでいます。



マウルブロン修道院
ドイツのバーデン=ヴュルテンベルク州にある中世の修道院で、世界遺産に指定されています。ノーベル文学賞を受賞した作家ヘルマン・ヘッセの自伝的な小説『車輪の下』の舞台としても有名です。

当時の落書きなど、当時の面影が保存されています。

クリスマス・マーケット
ドイツやオーストリアでは、クリスマスの時期になると、広場でクリスマス・マーケットが開かれます。
ミュンヘン中心部にあるマリエン広場では、華やかにライトアップされたクリスマス・マーケットに、多くの人が集まります。

一方、ヴィッテルスバッハ広場のクリスマス・マーケットは、中世の飲食店や道具屋を模した店が並び、当時の雰囲気を楽しむことができます。

エングリッシャーガルテン(英国庭園)
ミュンヘンの中心部にある、とても大きな庭園です。

庭園には、円形神殿(モノプテロス)があります。

より深くテーマを考えるために:リテラの読みかた
「哀」——欠落を埋める旅
私たちの感情を表す「喜怒哀楽」の「哀」とは、はっきりした悲しさだけではありません。さびしさ、すれ違い、伝えられなかった気持ち——。そうしたものも「哀」です。そしてこれは、隠されやすい感情です。心配をかけたくない、弱みを見せたくないなどの理由で、表に出てこないまま心の中に残ります。
リヒトはそうした「哀」を、人の中にも、自分の中にも、感じることが苦手です。だから知らないうちに、相手を傷つけてしまうこともあります。節さんにずっと泣くことを止められてきたリヒト。彼が節さんの写真を取り戻したい、節さんのことを理解したいと強く思うようになったのは、節さんがいなくなった悲しみと不安を、自分でもそうとわからないまま、埋めようとしたからなのかもしれません。
節さん自身も、その気持ちを表に出さない人でした。登場人物それぞれが「哀」を抱えながら、誰も言葉にできないまま時間が過ぎていきます。だからこそ、旅の最後にリヒトが「また会いたい」と伝えられたことには、大きな意味があります。「哀」があることを知ったリヒトは、はじめて素直に、優しくなれたのです。
光とステンドグラス、そして影
この作品には、光やステンドグラスといったモチーフが登場します。
光はステンドグラスに差し込み、時間によってうつろう、豊かで微妙な色彩を生み出します。しかし、元の光は同じ。私たちも異なる色を持ちながら、心の奥には同じ光があることを感じさせます。
また、クリスマス・マーケットの光も印象的です。華やかなクリスマス・マーケットの光は、リヒトの心を明るく迎えてくれます。一方、中世の暮らしを再現したクリスマス・マーケットでは、暗いところは暗いままでいさせてくれる優しさを持ちます。
人の心は外から見えるものだけではわからない。そのままでは見えない、色の奥の透明な光や、光が当たらない暗がりなども含めて、その人の心をつくっていることを感じさせます。
節さんとレイさん——秘めた思いは、誰かの背中を押す
節さんとレイさんは双子でありながら、疎遠になり、気持ちを伝えないまま時間が過ぎていきました。真面目と自由、論理と感覚——正反対でありながら、大切な人への思いを言葉にできないという点では同じです。この物語は、そうした「伝えられなかった思い」がどこに残り、誰に届くのかを問いかけています。
一枚の写真には、写っていないけれど、それを撮った人がいます。また、写された笑顔には、その笑顔をつくった人がいます。写真には写らないところに、記録にも、言葉にもならないけれど、確かにその人が生きていた時間があったのです。
リヒトとマサムネは、「国境」を越え、旅をします。そして、二人の人生に触れたことで、リヒトははじめて「また会いたい」と自分の言葉で伝えることができました。誰でも一つくらいは、言えなかった言葉や、伝えそびれた気持ちがあるものです。親や友達、もういない人——読み終えたあとに、あなたの心にも、誰かがふと浮かんでくるかもしれません。そういう読後感がこの作品にはあります。
参考作品
『葬送のフリーレン』(原作:山田鐘人/ 作画:アベツカサ)
魔王を倒した勇者一行の「その後」を描いた物語です。長い時間を生きるエルフのフリーレンは、旅を続ける中で、かつての仲間ヒンメルのことを「もっと知ろうとすればよかった」と気づいていきます。
『リヒト!』と同じように、旅の中で出会う人たちとの関わりを通じて、もういない大切な人の姿が少しずつ見えてくる。時間の流れと小さな切なさが重なる、そんな作品です。
2026年 読書感想文課題図書のページ
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