それぞれの課題図書の紹介と考えるポイント、声がけのヒントなど、読書感想文に役立つ情報を、順次公開しています。
内容の紹介
野生動物の身体に超小型の記録装置を取り付け、その生態を探る「バイオロギング」。この新しい研究手法によって、さまざまな野生生物の生態が明らかにされています。本書では、地球をめぐるアホウドリの飛行や、マグロやクジラの回遊、マッコウクジラやアザラシの潜水といった、動物たちのダイナミックな生態を紹介するとともに、そうした行動の裏にある物理法則を解き明かします。
読む前の下ごしらえ
考えてほしいこと
読む前に、次のことを考えてみましょう。
- マグロやホオジロザメが世界一速い魚である理由は、どんなものだったでしょうか。アホウドリと、ハチドリの飛ぶ仕組みの違いはどんなものだったでしょうか。この本では、並外れてダイナミックな動きを見せる動物たちがたくさん登場しますが、そうした行動が可能である理由も説明されています。このような説明を通して、あなたが学んだことはどんなことですか。
- 動物たちの生態や、その物理法則が明らかにされることは、私たちの生活とどのような関わりがあるのでしょうか。
- 技術は、開発されるのを待っているだけでは、発達しません。この本で紹介されている研究者たちは、技術の発達を追い風にして、自ら新しい研究機器や方法を編み出していきます。こうした研究者たちの態度から、あなたはどのようなことを学びますか。
読んだ後に
読み終わったら、次のことを考え、書いてみましょう。
考えるヒント
- 本で紹介されている、個別的な動物の生態について、驚いたことや心に残ったことを書くだけでなく、調査研究における筆者の科学的なものの考え方や、態度について考えることが大切です。また、そうした考え方や態度が、これからのあなたの人生や、社会の中でどのような意味を持っていくのか、考えてみましょう。
- バイオロギングを用いた研究によって、様々なことが明らかになっています。本書で紹介されていた事例の他にも、どのようなことがわかってきたのか、調べてみましょう。
- 例)「世界一のろい魚」発見!(国立極地研究所)
- その他のニュース(google)
保護者の方へ
上記の「考えるヒント」を参考に、対話をしながらアイデアを拡げてください。アイデアのメモをたくさん作り、並べ替えながら、感想文の構成を練りましょう。
世界一速い魚と世界一のろい魚、46日で地球を一周するアホウドリ、ホバリングを可能にするハチドリといった、動物たちの中でも特にダイナミックで、思わず知的好奇心をくすぐられる動物たちを紹介するのは、読者の興味を引くことだけが目的ではありません。そうした極端な能力をもつ動物たちの生態を観察し、研究することが「飛ぶとはどういうことなのか?」「我々にとって酸素とはどういうものなのか?」といった本質的な問いに対する答えになるのです。
各章ごとに、その章のまとめがあり、読者の理解を助けてくれます。また、ユーモアのある軽妙な語り口も魅力的で、生態学や物理学の入り口として、高校生が読むにふさわしい一冊です。
読書感想文を通して考えてほしいテーマ
- 生態学
- 物理学
- 科学的な態度
構成について
構成にルールはありませんが、どう書いたらいいかわからない時は、次のことを参考にしてください。「誰に、何を伝えたいか」
- ことばは、他者に思いを伝えるためのものです。考えたことやメモを元に、書き始める前に、「誰に、何を伝えたいか」を考えましょう。「伝えたいこと」は、できるだけ一つにしぼりましょう。
- 誰に……例)家族、友人、先生
- 何を伝えたいか……例)本の面白さ、感動したところ、自分の想い
- 「伝えたいこと」をしぼることで、構成を立てやすくなります。
文章の構成
- 文章は、三つのパートに分かれることが多いようです(※三段落で書かなければならないという意味ではありません)。
- 【はじめ】
- この文章で「伝えたいこと」や、あらすじを、簡単に書きます。なお、あらすじの有無を学校から指定されることもあります。
- 【なか】
- 本に貼った付せんや、考えたこと、メモを元に、「伝えたいこと」をより詳しく書いていきます。
- 物語の内容と自分の体験を交えると、「伝えたいこと」の説得力が増し、生き生きとした作品に仕上がります。
- 物語で印象に残った場面や人物について書きましょう。また、それに対しどう感じたかを書きましょう。
- 関連する自分の体験を書きましょう。「いつ、どこで、誰が、どうした」から書き始めるとよいでしょう。
- 体験は、過去の思い出だけでなく、本を読んだ後に人に聞いたことや、調べたことでもよいでしょう。
- 体験の最後には、その体験を通して学んだこと・感じたことを、物語の内容と絡めながら書きましょう。
- 学んだことを実行するのはなぜ難しいのか、そのためにはどうすればよいのかといった、より現実に根ざした内容の段落を追加すると、深みが増します。
- 【おわり】
- 「伝えたいこと」をもう一度強調し、未来につながる決意や前向きなことばで締めます。