【2015読書感想文特集】『ブロード街の12日間』(中学生向け課題図書)

ブロード街の12日間

それぞれの課題図書の紹介と考えるポイント、声がけのヒントなど、読書感想文に役立つ情報を、順次公開しています。

内容の紹介

舞台は1854年のロンドンの下町・ブロード街です。貧富の差が激しい当時のイギリスで、両親をなくした主人公の少年・イールも、苦しい生活を強いられています。そして8月のある日、多くの人の命を奪う「青い恐怖」が、ブロード街を覆い尽くします。

読む前の下ごしらえ

考えてほしいこと

読む前に、次のことを考えてみましょう。

Le Petit Journal,1912

Le Petit Journal,1912

1854年当時、多くの人の命を奪う「青い恐怖」は、正体がわからず、防ぎようがありませんでした。人々は、それを死神などに例え、なすすべもなく恐れました。

あなたは、「青い恐怖」とは何だと思いますか。

読んだ後に

読み終わったら、次のことを考え、書いてみましょう。

考えるヒント

  • 主人公・イールについて、見習いたい点はありますか? それはどんなところでしょうか。詳しく書いてみましょう。
  • あなたの生活や人生において、困難を乗り越えるために必要なことは何でしょうか。考えて書いてみましょう。
  • ジョン=スノウ博士は、実在の人物であり、集団における病気の流行状態を研究する「疫学(えきがく)」の祖と言われています。ジョン=スノウ博士について、調べてみましょう。
ジョン=スノウ博士 (1813-1858) Autotype 1856, published in 1887

ジョン=スノウ博士 (1813-1858)
Autotype 1856, published in 1887

ブロード街の井戸

ブロード街の井戸

ジョン・スノウの調査結果。中央の井戸(✕印)を中心に感染者が拡がっている。(クリックで拡大)

ジョン・スノウの調査結果。中央の井戸(✕印)を中心に感染者が拡がっている。(クリックで拡大)

保護者の方へ

上記の「考えるヒント」を参考に、対話をしながらアイデアを拡げてください。アイデアのメモをたくさん作り、並べ替えながら、感想文の構成を練りましょう。

1854年、イギリスのブロード街で実際に起こったコレラの伝染を題材にした物語です。作中に登場するジョン=スノウ博士やホワイトヘッド牧師は実在のモデルがいますが、主人公の少年・イールは架空のキャラクターです。

イールは常に何かに追われ、あるいは追いかけているため、スピード感と緊張感に満ちた物語展開となっています。イールは、物語の早い段階から苦境に立たされます。皆が余裕のない生活を送っている19世紀の世相を踏まえ、周囲の人物も優しい人ばかりではありません。そうした逆境の中、自分のことだけではなく、街に生きる人々を何とか救いたいという正義感、そして、頭の回転の速さと行動力で、コレラが空気感染ではなく、水などを経由した経口感染で広がるというジョン=スノウ博士の説を実証するべく奔走します。

恐怖と混乱が街を支配していますが、イールとジョン=スノウ博士の武器は、科学的な思考力です。調査に必要な視点「5つのW」、そして、体力、観察力、聞く力、頭、ペンを駆使し、感染の経路を明らかにしていく物語展開には、興奮を覚えずにはいられません。

読書感想文を通して考えてほしいテーマ

  • 勇気
  • 科学

声がけのヒント

感想文では、物語の面白さ以上に、主人公イールのたくましさや、合理的な思考の重要性に焦点を当てるとよいでしょう。また、実在の人物であるジョン=スノウ博士や、「疫学」について調べてみると、書くことの幅が広がります。

構成について

構成にルールはありませんが、どう書いたらいいかわからない時は、次のことを参考にしてください。

「誰に、何を伝えたいか」

  • ことばは、他者に思いを伝えるためのものです。考えたことやメモを元に、書き始める前に、「誰に、何を伝えたいか」を考えましょう。「伝えたいこと」は、できるだけ一つにしぼりましょう。
    • 誰に……例)家族、友人、先生
    • 何を伝えたいか……例)本の面白さ、感動したところ、自分の想い
  • 「伝えたいこと」をしぼることで、構成を立てやすくなります。

文章の構成

  • 文章は、三つのパートに分かれることが多いようです(※三段落で書かなければならないという意味ではありません)。
  • 【はじめ】
    • この文章で「伝えたいこと」や、あらすじを、簡単に書きます。なお、あらすじの有無を学校から指定されることもあります。
  • 【なか】
    • 本に貼った付せんや、考えたこと、メモを元に、「伝えたいこと」をより詳しく書いていきます。
    • 物語の内容と自分の体験を交えると、「伝えたいこと」の説得力が増し、生き生きとした作品に仕上がります。
      • 物語で印象に残った場面や人物について書きましょう。また、それに対しどう感じたかを書きましょう。
      • 関連する自分の体験を書きましょう。「いつ、どこで、誰が、どうした」から書き始めるとよいでしょう。
      • 体験は、過去の思い出だけでなく、本を読んだ後に人に聞いたことや、調べたことでもよいでしょう。
      • 体験の最後には、その体験を通して学んだこと・感じたことを、物語の内容と絡めながら書きましょう。
    • 学んだことを実行するのはなぜ難しいのか、そのためにはどうすればよいのかといった、より現実に根ざした内容の段落を追加すると、深みが増します。
  • 【おわり】
    • 「伝えたいこと」をもう一度強調し、未来につながる決意や前向きなことばで締めます。
読書感想文の書き方・文例について、より詳しくは「テーマを考えてから書こう! ~読書感想文のコツ」をご覧ください。
この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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カテゴリー: ブックレビュー

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