【2015読書感想文特集】『ぼくとテスの秘密の七日間』(高学年向け課題図書)

ぼくとテスの秘密の七日間 (文学の森)

それぞれの課題図書の紹介と考えるポイント、声がけのヒントなど、読書感想文に役立つ情報を、順次公開しています。

内容の紹介

十歳のサミュエルは、家族とバカンスで行ったテッセル島で、テスという風変わりな女の子に出会います。テスには父親がおらず、お母さんと二人だけで暮らしています。テスと仲良くなったサミュエルは、彼女の秘密の計画に協力することになります。

読む前の下ごしらえ

考えてほしいこと

読む前に、次のことを考えてみましょう。

  • オランダのテッセル島について、場所や雰囲気などを見てみましょう。
【場所】

【雰囲気(ストリートビュー)】

  • あなたは家族を大切にしていますか? 考えてみましょう。

読んだ後に

読み終わったら、次のことを考え、書いてみましょう。

考えるヒント

  • サミュエルやテスのことばで印象に残ったものはありますか? また、それはなぜですか?
  • 人は、いつか死んでしまいます。家族も、友人も、あなた自身も、いつか死んでしまいます。
    • いつかは別れなければならないのに、なぜ、あなたは、家族や友人と付き合うのでしょうか。
    • 家族や友人と付き合っていくことと、サミュエルの「じぶんの人生でなにをするかは、ぼくがじぶんで決める」ということばには、どのようなつながりがありますか?
    • 親しい人々といつか別れなければならないと知った上で、あなたは、どのように生きたいですか?

保護者の方へ

上記の「考えるヒント」を参考に、対話をしながらアイデアを拡げてください。アイデアのメモをたくさん作り、並べ替えながら、感想文の構成を練りましょう。

サミュエルは、兄から「教授」とあだ名をつけられるほど、早熟で、少し理屈っぽい男の子です。友人の父の葬儀や兄の怪我、島で知り合ったヘンドリックさんのカナリアの埋葬などに触れ、「死とか、わけのわかんないひどいこと」に慣れなければならない、と考えます。死は誰にでもやってきて、親しい人を隔ててしまいます。サミュエルは、まず、孤独に慣れようとしますが、ヘンドリックさんに諭され、生きているうちに親しい人々との関係を大切にするほうがよいと気づきます。一方、テスは、自分のことを知らない父親(ヒューホ)にあこがれを抱きながら、自分の存在を打ち明けることができません。そして、ヒューホのある一言でその思いを断ち切ろうとしますが、サミュエルが独断で行動に出ます。「じぶんの人生でなにをするかは、ぼくがじぶんで決める」というサミュエルの考えは、「死とか、わけのわかんないひどいこと」が起こる人生に対する、一つの結論でした。

家族や人間関係は、当然のように与えられたものではなく、また、いつか死によって隔てられてしまうものです。しかし、だからこそ、ヒューホとテスが家族に「なっていく」ように、自分たちで作り上げていかなければなりません。「日の当たる海岸は、バカンスそのものだ。だけど、ぼくたちがここでやっていることは、人生そのものだった」とサミュエルが感じたように、テスとの秘密の七日間は、自分たちや家族の人生を再発見し、よりよいものにしていくための、大切な出発点でした。

読書感想文を通して考えてほしいテーマ

  • 家族

声がけのヒント

テーマが抽象的であることや、直感的でない表現があることから、ある程度読み慣れたお子様におすすめです。何となく読んでしまうと、サミュエルの変化の理由などがわからなくなってしまうかもしれません。サミュエルと一緒に、様々なことを考えながら読むとよいでしょう。

構成について

構成にルールはありませんが、どう書いたらいいかわからない時は、次のことを参考にしてください。

「誰に、何を伝えたいか」

  • ことばは、他者に思いを伝えるためのものです。考えたことやメモを元に、書き始める前に、「誰に、何を伝えたいか」を考えましょう。「伝えたいこと」は、できるだけ一つにしぼりましょう。
    • 誰に……例)家族、友人、先生
    • 何を伝えたいか……例)本の面白さ、感動したところ、自分の想い
  • 「伝えたいこと」をしぼることで、構成を立てやすくなります。

文章の構成

  • 文章は、三つのパートに分かれることが多いようです(※三段落で書かなければならないという意味ではありません)。
  • 【はじめ】
    • この文章で「伝えたいこと」や、あらすじを、簡単に書きます。なお、あらすじの有無を学校から指定されることもあります。
  • 【なか】
    • 本に貼った付せんや、考えたこと、メモを元に、「伝えたいこと」をより詳しく書いていきます。
    • 物語の内容と自分の体験を交えると、「伝えたいこと」の説得力が増し、生き生きとした作品に仕上がります。
      • 物語で印象に残った場面や人物について書きましょう。また、それに対しどう感じたかを書きましょう。
      • 関連する自分の体験を書きましょう。「いつ、どこで、誰が、どうした」から書き始めるとよいでしょう。
      • 体験は、過去の思い出だけでなく、本を読んだ後に人に聞いたことや、調べたことでもよいでしょう。
      • 体験の最後には、その体験を通して学んだこと・感じたことを、物語の内容と絡めながら書きましょう。
    • 学んだことを実行するのはなぜ難しいのか、そのためにはどうすればよいのかといった、より現実に根ざした内容の段落を追加すると、深みが増します。
  • 【おわり】
    • 「伝えたいこと」をもう一度強調し、未来につながる決意や前向きなことばで締めます。
読書感想文の書き方・文例について、より詳しくは「テーマを考えてから書こう! ~読書感想文のコツ」をご覧ください。
この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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カテゴリー: ブックレビュー

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