【生徒作品】『友だちができた~クリスマスケーキを作ろう!~』小4・Kさん

友だちできた
昨年度の発表会に向けて、同じクラスに通う四年生のKさんとMさんは「ネコとネズミの登場する物語を書こう」というテーマで、物語作りのプロジェクトに取り組みました。

豊かな情景が描かれた昔話を愛するKさんは、ご自身でも心の中でたくさんの物語を思い描いています。これまでにも、冬が舞台の物語を書いてくれました(「雪の日のおくりもの」)。どちらの作品にも、雪国で冬を過ごすKさんの気持ちや体験が、とても良く描かれています。今回の『友達ができた ~クリスマスケーキを作ろう!~』も、友達の心に寄り添う、やさしい物語です。

『友だちができたよ』
小4・Kさん

クリスマスイブの朝、たくさんの人が楽しんでいます。買い物にいったり、プレゼントを探したり。
でも、ねこにとっては、いやなことなのです。なぜなら、ねこはのんびりした性格で、がやがやしたところがきらいだからです。

ねこは、一けん家に一匹でくらしていました。その庭には、春は花がたくさんさきますが、今は冬なので、雪がつもっています。

毎年、ねこは一匹でクリスマスを楽しみにしています。けれど、本当は少しさびしかったのです。

ねこは、まちのケーキ屋さんに、クリスマスケーキを買いにいきました。ねこは、歩きながら「なんのケーキにしようかな」と、考えていました。ねこは、あまいものが好きなので、この日を楽しみにしていました。

ケーキ屋さんにつきました。木のとびらをあけると、「カラン」と、ベルの音がしました。店員さんは、うさぎです。ショーケースを見ると、大きな切りかぶのケーキしかありませんでした。ねこは、小さいケーキが欲しかったのです。

ねこは、店員さんに「もう、このケーキしかないんですか」と、たずねました。
「今日は、クリスマスイブなので、お客さんが大ぜい来て、売り切れてしまいました」
ねこは考えました。けれど「このケーキください」と、たのみました。大きいケーキでも、毎日少しずつ食べればいいと思ったからです。

店員さんがケーキを袋の中につめていると、
「カラン、カラン、カラン」
ねずみがすごいいきおいで扉を開けて店に入ってきました。店の中に冷たい風もはいってきました。店員さんもねこも、びっくりしました。

ねずみは、耳に星のマークがついていて、体は細くて小さいけれど、ひげはピンと立っています。
「クリスマスの大きなケーキをください!」
「ごめんなさい。このケーキが最後のケーキなんです」
うさぎの店員は、長い耳をたれて困っています。
「ケーキ食べたかったのに」と、ねずみも耳をペタンとして、がっかりしました。ねこは、こまりました。最後の一個なのにどうしよう。

でも、ねこは、ねずみに「このケーキあげます」と、やさしくいいました。

「けれど、あなたが買ったのに……」
「いいですよ。これ食べてください。大きすぎると思っていたからいいですよ」
「ありがとうございます」と、ねずみは元気な声で喜び、受け取りました。

その後、ねこは家に帰る途中「あげっちゃった。どうしよう」と、悩んでいました。

ねこは、くだもの屋さんの前を通りました。すると、店先に、真っ赤ないちごがならんでいました。
「そうだ。自分でケーキを作ろう」と、ひらめきました。

ねこは、くだもの屋さんで、真っ赤ないちごを一箱買いました。そして、帰ると途中、また、あのねずみに会いました。
「さっきはありがとう。家族みんなで大きなケーキが食べたかったから本当に助かったよ。これからどうするの?」
「これから、自分でケーキを作ろうと思って」
「ぼくも一緒に作っていい?ケーキのお礼に手伝わせて!」
「いいよ。大かんげいだよ」

そこで、ねことねずみは、一緒にケーキを作ることになりました。もう二人は友達です。
さっそく、ねこの家で作りはじめました。パンケーキの上に、半分に切ったいちごを五個のせて、生クリームをたっぷりかけました。そのまた上に、パンケーキをのせて、いちごを五個のせて、生クリームをかけました。これで完成です。とてもいい香りがします。

「さあ、テーブルの準備をしよう」
ねこと、ねずみは、木のお皿と、紅茶のマグをもってお部屋にいきました。

しかし、テーブルにケーキを置いたまま、ねことねずみがいなくなると、ケーキのいいにおいにつれられて、くまがやってきました。くまは、まだ子ぐまで、お腹が空いていました。キッチンのテーブルに置いてあるケーキを見つけると、くまは、がまんできず、こっそりまどから入ってケーキを食べてしまいました。
「ふぁ、おいしかった」
子ぐまは、お皿についたクリームまでぺろりとなめてしまいました。そして、入ってきた窓から出て、帰っていきました。

雪のつもった庭には、子ぐまの小さな足あとが続いています。

ところが、しばらくすると、子ぐまはだんだん気持ちが沈んできました。
「どうしよう。食べちゃった。あやまらなくちゃ。けど、怒られるかも」
しかし、子ぐまは、あやまりに行くことにきめました。いそいで家に帰って、お母さんぐまに、ケーキをたべてしまったことをはなしました。そして、フルーツや、きのみや、はちみつをつめたカゴのバックを持って、ねこの家にかけていきました。

そのころ、ねことねずみがキッチンにもどると、ケーキがありません。
「ケーキがない」
ねずみは、びっくりしていいました。

その時、玄関から「コンコン」と、ノックの音が聞こえました。あの子ぐまです。
「ごめんなさい。おなかがすいて、ケーキ、食べちゃいました」
子ぐまは、バッグを、ねことねずみにわたしました。

ねことねずみは、びっくりしました。でも、ねこも、ねずみも怒りませんでした。

「もう一回みんなで作ろう」と、ねこがやさしくいいました。

「やったー! ねこさん、ねずみさん、ありがとう」
子ぐまは大喜びです。

三匹は、生地をこね、もう一度、パンケーキを焼き、半分に切ったいちごを五個のせて、生クリームをたっぷりかけました。その上に、パンケーキをのせます。

今度は、いろいろなフルーツや木の実をのせました。キウイやミカン、リンゴ、そして、くるみや、しいの実など、いろとりどりのフルーツケーキの完成です。ケーキからは甘い香りがして、フォークを入れるとふかふかとして、とても美味しそうです。

三匹は、はちみつ入りの紅茶と、ケーキを美味しそうに食べました。口の中で、甘い生クリームと、いろいろなフルーツの味がします。

また、しずかに雪がふりはじめました。
こうして、三匹は、クリスマスイブの日に、なかのいい友達になったのです。

この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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カテゴリー: 生徒作品

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