ブッククラブを通して、大人も学び続ける

当教室では、講師は教える者であると同時に、自身が学び続ける学習者でもあります。

そのため、講師たち自身も日常的なブッククラブを通して、交流し、議論を重ねながら教育に関わる知識・技術・それぞれの考えを高め合っています。

そこで今回は、先日行ったブッククラブで取り上げた『マルチ能力が育む子どもの生きる力』(トーマス・アームストロング著/吉田新一郎訳/小学館)で交わされたコメントの一部をご紹介します。

本書の概要

『マルチ能力が育む子どもの生きる力』では、アメリカ・ハーバード大学のハワード・ガードナー教授が提唱したMI(Multiple Intelligences=マルチ能力、多重知能)理論に基づいた視点を教師が授業や評価で実践する際の具体的な方法が紹介されています。

マルチ能力とは、人間が生きるために使用する多様な能力を次のような8つの要素に分類したものです。

  • 言語能力
  • 論理的-数学的能力
  • 空間能力
  • 身体-運動能力
  • 音感能力
  • 自己観察能力
  • 人間関係形成能力
  • 自然との共生能力

講師たちのコメント(抜粋)

「マルチ能力使って生活していることは、経験的に理解できる。」

人間の持つ複数の能力を活性化させながら多角的に学ぶことは、理解や定着に効果があると思いました。こうした効果の有用性は、経験的にも理解できます。たとえば歴史の年号の覚え方にも人によって色々な工夫があり、覚え方にも向き不向きあるようです。リズムをつけた語呂合わせ(音感能力)、何度も書いて覚える(言語、字の並び=空間、身体能力)、歴史を物語のように覚えその一部として(言語能力)、テンキーを指で打つように(論理あるいは身体能力)など。しかし、マルチ能力理論は、そうした経験則以上にこうして理論として知っておいた方がいいですね。

「マルチ能力理論は教師や管理職の立場にいる人は常識として知っておくべき。」

マルチ能力理論は、教師や管理職のような多様な人物を指導したり調整したりする立場の人にとっては、知っておくべき視点のひとつだと思いました。

そしてこの本は、まず教師自身がどのようなマルチ能力を持つ個人なのかというところから始まっていますが、自分自身が多様性の中の中に存在する一個人であることきちんと意識することが、マルチ能力の視点を指導に生かすためには重要だと思います。

もともと多様な能力をその人なりの配合で複合的に駆使しながら、私たちは生活し、そのときどきの問題解決を図っています。

しかし、その個人の能力の向き不向きに依存し、無自覚に発揮されることが多いでしょう。

教師も指導の際に自分の得意な能力を発揮しながら教えているはずです。決してそれは悪いことではないのですが、大事なのは「その教え方では、適合しない生徒が必ずいる」という認識を持ち続けることだと思います。

こうした視点を持つことで、得られる指導上の利点は次の2点があげられます。1つ目は、教師自身が自分が知らないうちに避けていた教え方に気がつき、そうした指導法を取り入れる努力をすることができるということ。2つ目は、積極的にチームティーチングの視点を持つきっかけになるということ。自分の限界を指導限界にしないということだと思います。

「思考の枠組みとしてのマルチ能力」

「マルチ能力」とありますが、それは「できる/できない」という基準の能力(ability)ではないということに注意しなければ、大きな誤解を招くことにもなりかねません。その枠組みを通した見方に「興味を持てるか/持てないか」というほうが、特に子どもを見る場合、本質をとらえているように思えるからです。子どもがある活動を苦手だという時、それは単に、その活動が嫌いだからということが少なくありません。それは子どもの能力というよりも、それについての肯定体験を持っているかどうかにかかっています。私は、「マルチ能力」を、どのように物事を捉えるかという「認識の枠組み」あるいは「知性の枠組み」のことだと感じています。

「マルチ能力」の生理学的な根拠は、人の脳の機能が生理学の領域においてまだすべて解明されていない以上、やはり確定しているとは言えないと考えます。しかし、思考のフレームとして授業に組み入れることが可能です。池袋駅に行って、試しに、すべての領域の視点を使って「よりよい駅を作るには」という課題を考えてみました。すると、「不快な音を抑えるには」(音感)、「人と人のストレスを抑えるには」(人間関係)、「自殺を留まらせるには」(自己観察・管理)、「人の流れをスムーズにするには」(空間)など、普段では思いつかない様々な視点が浮かび上がりました。これは、現実的な問題解決の場面で、様々な解決方法の可能性を提示してくれます。教室では、低学年において、「五感」という枠組みを提示し、そこから、具体的操作の各課題を設定しています。しかし、より多様な物の捉え方や意味づけ方があるのではないかという疑問は以前からありました。五感からの作文は、それだけでも、空間や音感、自然などの様々な能力を使っています。たとえばその次の段階として、「マルチ能力」を活用した物事の見方、関わり方を促す課題を、生徒にマルチ能力という考え方を提示する意味をこめて、設定するとよいかもしれません。「物事をどのように見るか」「どのような手段で考えるか」という問題解決のための道筋としてマルチ能力の分類を活用し、自分にとっての得意なツールを知ることは、非常に重要であると感じます。

「今後の授業で取り組みたいこと」

子どもに継続的な振り返りや見直しをさせる

振り返りを習慣付けることで、子どもたち一人一人が自身と向き合い、主体的な学びの姿勢を持てるようになる。振り返りにありがちな「○○がうまくいかなかったので、次回頑張りたい。」というような反省一色ではなく、子どもたち自身が肯定体験をしたと実感がもてるような振り返りを書けるよう導いていきたいです。

先日、小学校二年生の女の子の保護者から、彼女が書いた作文について話を聞くことができました。教室で五感を使った作文をした際に習った作文の書き方を、今度は学校の日記で紹介したそうです。題して「良い作文の書き方」でしょうか。接続詞をたくさん使う、段落わけをする、五感で感じたことを詳しく書く……。その後の作文にも自分で書いた日記の内容が活かされて、楽しそうに作文を書いているそうです。今回は、彼女が自主的に行ったものですが、教室でも課題の間に自身の学びについて振り返りをする時間を設けていきたいと思いました。

「わからない」を「ほっておかない」

P148「からだで表現する」で紹介されていた、答えがわかったら子どもたちに手を挙げさせる方法の応用は、「わからない」を「ほっておかない」という取り組みになると考えました。手を挙げるだけではなく、頭をかいてみたり、理解度を指であらわしたりという動作で、言葉ではうまく表せないことを表現してもらうのは、講師とって大きなメリットがあると思います。「わからない」にはさまざまな原因があります。その原因に向き合い克服していくことに、生きる力を育む学びとなります。勉強に苦手意識を感じている子、否定体験を多く経験してしまった生徒の中には「間違えるぐらいなら、なにも言いたくない、書きたくない。」という姿勢をとる子もいます。そして、ひたすら答えを教えてもらうのを待つという悪循環を引き起こしています。また、何らかの障害を持っている生徒の場合、教師に質問すること、考えたことを言葉で表現することが困難な場合もあります。そういった子どもたちとの、学びの切り口として、言葉以外の表現からコミュニケーションをとっていくという柔軟な取り組みを授業の中で取り入れたいと思いました。

ブッククラブの利点

各自が本から理解した内容を共有し、各々の取り組みとの関連性について考察したり新たな問題提起をし、議論したりすることで双方向の学びを継続して行うことができます。他者と交流を持ちながら学ぶので、様々な視点を共有し、より深い理解を得ることができます。また、交流を持ちながら取り組むことで、同じ興味を共有する者同士で気軽に楽しく、モチベーションを持続することができます。

こうした他者と交流しながら学び続ける文化は、子どもだけでなく大人であっても持ち続けたいものですね。 リテラ言語技術教室では、日常的に講師自身が学び続け、よりよい授業を模索しています。

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カテゴリー: 教育コラム

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