【アートメチエ報告】第二回 千住アートメチエ文化教養講座『一生に一度見たい!オーロラの魅力』

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2012年10/27(土)に第二回 千住アートメチエ文化教養講座『一生に一度見たい!オーロラの魅力』が開催されました。今回はその様子を紹介致します。

約30年に渡り北半球各地で、オーロラを撮影し続けてきた門脇久芳先生を講師にお招きして、美しい写真や映像、音声と共にオーロラの魅力や、科学的説明などわかりやすく解説していただきました。

事前予約は定員一杯、当日で飛び込みでご来場なさる方もいらっしゃり、たくさんの方にご参加いただきました。

内容紹介

オーロラ発生の原理

オーロラは、太陽から放出された電気を帯びたエネルギー(太陽風)が地球の約100キロ上空の酸素と窒素の分子、原子と衝突することで発光する現象です。

門脇先生は、太陽風を川の流れ、地球をその中に転がる大きな石に見立てて、太陽風が地球の磁場により妨げられ、直接地球にやってくるのではなく、地球の後ろ側に溜まり、地球の磁場により太陽風が引き寄せられ、発光現象が起きる様子をわかりやすく図解してくださいました。

川の底に大きな石があると、その後方で水流が渦を巻いて、逆流が発生します。釣りや川遊びの好きな人はすぐピンと来るかもしれません。逆流はその名の通り川の流れに反し、下流から上流方向へ流れようとする水流のことですから、地球上で見られるオーロラは、太陽と逆方向から発生するということになります。

太陽の活動はこれから活発化する見通し?

太陽で黒点とコロナホールが発生します。黒点とコロナホールとは、太陽の表面温度の低い部分です。黒点やコロナホールが爆発すると、大きな太陽風が地球にきて、オーロラを発光させます。門脇先生はサウナの焼いた石(太陽)に水をかける(黒点・コロナホール部分)と熱蒸気(太陽風)がやってくるとの例えで説明されました。この黒点の数の増減は、太陽の活動の活発さの目安となっているそうです。2008年頃、黒点の数が減少し無黒点が多い年があり、太陽が異変?と騒がれた年もありましたが、最近は太陽活動極大期に向け、太陽は活発化しているようです。(ちなみに黒点の数は、宇宙天気情報センターによって確認できますので、興味のある方はご覧になってみてください。)

太陽活動が巨大なれば、激しいオーロラを発生させ、電波障害や誘導電流等による停電等の人々の生活にかかわる為に、最近「宇宙天気予報」という情報があります。その精度はまだ地球上の気象予報でいえば40年ぐらい前の精度でしかないそうです。40年前といえば、まだ気象衛星が本格的に実用化される以前ですから、宇宙のことはまだまだよくわかっていないといえるようです。そのため面白いことに、これから太陽の活動は活発化するという説もあれば、反対にこれから太陽の活動は停滞して地球は寒冷化が到来するという説もあり、まだまだ未知の部分が多い太陽のようです。

オーロラの音

オーロラの音を研究しているフィンランドのオーロラ研究所から特別に許可をもらって録音した貴重なオーロラの音を聴かせていただきました。研究所のパラボラアンテナにより集音したもので、世界でもほとんどデータがないものだそうです。音は、電気的なノイズのような「パチパチ・ピシピシ・ヒュー」といった音で、オーロラの美しくたおやかな様子とはまた違った印象でした。しかし、オーロラは、電子が大気中の原子と分子に衝突して起こる発光現象であるということから考えると、なるほどと思える音でもありました。オーロラの音を耳で聞いた人の報告はあるものの、実際録音機で録音記録された事はないそうです。

美しい写真の数々

写真:門脇久芳

写真:門脇久芳

後半は、オーロラの切手や門脇さんが撮影したオーロラ写真を見ながら、オーロラの出方、色や形、オーロラを撮影したロシアやグリーンランドでの撮影エピソード等を紹介していただきました。

門脇先生の写真のコンセプトは、「オーロラと人間の営み」だそうです。オーロラというと、人煙まれな極地で撮影されると思われがちで、そうした視点での多くの写真があるようです。しかし、そのオーロラを見る自分が今、ここに存在し、その自分を支える人のつながりがあること、その土地の人々の暮らしがあることに注目した門脇先生は、その写真の中に民家・街や犬、トナカイ等を写し込み「人間の営み」を介在させることにしたのだそうです。

ですから、確かに門脇先生の写真を見ると、オーロラの持つ神秘的な思いだけでなく、どこかほっこりとした人の暮らしの持つ温かみを感じることができます。

参加者の声

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この日は、Cafe Kova Garden さんが、特別に用意して下さったハロウィンにちなんだカボチャのケーキに舌鼓を打ちながら、みなさんくつろいだ雰囲気の中で講座を受けられていたようです。

講演後には「科学的な説明もわかりやすくて面白かった。」「実際にオーロラが見たくなった。」「美しいオーロラの写真のおかげでリフレッシュできた。」などさまざまな質問やコメントが寄せられました。

その中で特に印象的なコメントをして下さったのが、88歳の男性・I さんで、ご自身の70年来の疑問についてでした。

今から、70年ほど前のことです。Iさんは、秋田県出身の方で、現在の能代市から10キロほど離れた山間に住んでいました。

夜遅く、ふと見上げると、数キロに渡って空が真っ赤に染まっていたそうです。燃え上がるような赤い色で、その方角には能代の町があります。Tさんは、これは町でさぞ大変な火事が起こっているに違いないと思い、とても心配したそうです。

ところが翌日の新聞には、火事にまつわる記事はどこにも見当たりません。実際にそうした話もありませんでした。

あの出来事は何だったのだろうと、それからずっと心にひっかかっていたそうです。

それが、今回の講座で、「日本でもオーロラが観測されることがある」ということや、「オーロラは、緑だけではなく赤い色もある」ということを知り、実際にその写真を見て、その出来事はオーロラだったのではないか、思い当たったとのことでした。

門脇先生によると、そうした事例は日本でも確認されており、オーロラの可能性が高いとのお話しでした。その後調べてくださった資料を見ると、ちょうどその時期に太陽の活動が活発化しているようです。

70年間心にひっかかっていたことについて、解答が得られる(あくまでも可能性が高いということですが)という感動的な場面に立ち合うことができたことを嬉しく思います。

今回もたくさんのご来場をいただきましたことをお礼申し上げます。 リテラでは、大人も子どもも学び続ける文化・環境の創成を目的とした活動を続けて参ります。 第三回 千住アートメチエ『サンタクロースの民俗誌』もお楽しみに。

この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

カテゴリー: 文化教養講座

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