【アートメチエ報告】 千住アートメチエ 文化教養講座 「塔(タワー)とツリーの民俗誌」

第1回千住アートメチエ風景

2012年8月23日(木)、東京電機大学理工学部情報システムデザイン学系教授、石塚正英先生をお招きして、当教室のあるプティボワ―ビル一階の「Cafe kova Garden」にて、社会人講座を開催しました。

ここ千住の街からも、今年5月に完成したスカイツリーのそびえ立つ姿を見ることができます。第一回のテーマ「塔(タワー)とツリーの民俗誌」では、塔(タワー)と木(ツリー)をキーワードに歴史をたどり、人々に受け継がれてきた技術と思いについて、お話し頂きました。

講座内容 抜粋

「法隆寺の五重塔は木造建築なのに、なぜ、1300年ももっているのか?」

五重塔は屋根の数を数えてみると五階建てのように見えるが、実際には一階建て、つまり「五層一階」の建築物なのである。では、建物の中はどうなっているかというと、一本の太い柱(心柱)が土台付近から塔の先端に突き出ていて、相輪まで貫かれている。この心柱は、日本家屋の中心にどんと構えている大黒柱とは異なる役割の柱だ。心柱は、幹の細い樹木が暴風のさなかでもたやすく倒れずに、揺れ続けているのと同じ原理で、どんな大地震がきても五重塔が堪えられるようにと備え付けられたものだ。そのため心柱は、塔体とは5層目の屋根の頂上部と1箇所のみ接していて、地震が起きた際はまるで振り子のように揺れるのである。そして、振り子のように揺れる心柱と、地面からの揺れが伝わる塔体では振動数が異なり、お互いの揺れの力が干渉しあって揺れ小さくし倒壊を防いでくれるのだ。

「五重塔からスカイツリーに受け継がれた建築技術とは?」

日本最古の五重塔で用いられた心柱の構造が、実は、日本最大の建造物として完成したばかりの東京スカイツリーにも用いられている。東京スカイツリーには、地震や強風の揺れに対し、安心・安全な建物とするため、心柱の役割と同じ鉄筋コンクリート造の円筒が中央部に設けられた。

「日本人の自然観と仏像との関わりは?」

日本では縄文より、自然物・自然現象に対する信仰や儀礼があった。これは古代インドに発する仏教には見られない自然観だが、仏教の日本布教の際、「山川草木に悉く仏性あり」として、古来の自然信仰と仏教の信仰形態が重ね合わされた。奈良平安時代の一木彫り仏像などは、大木の生命力と仏が一体となり、祈りの対象となっている。平安時代になると樹木への信仰は薄まり、仏像も一木ではなく寄木造りで表現されるようになるが、樹木の霊にこだわって一木で仏像を造る技法は地方に残り、やがて江戸初期に円空において庶民の間に復活することになる。素材である樹木それ自体に神性を見出す精神は、古代より受け継がれてきている。

参加者の感想より

2008-01-01 00.00.00

  • 自分はまだ高校生で、まだまだ学ぶことが沢山あります。そんな中で、今回は興味深いことばかりでした。例えば、「仏舎利」の「舎利」という言葉。どこかで聞いたことがあるなと思っていたら、「円覚寺舎利殿」のことでした。これは鎌倉中期以降に登場した北条時宗が祀られているところです。「舎利」だなんて、かっこいいな、くらいにしか考えていなかったのですが、このようにまた違った視点から歴史をみれば、新しい発見があるのかとしみじみ思いました。
  • 二時間と言う時間があっという間に過ぎてしまい、又、日本人である事の大切さ、遠い時代の時の流れが今も私達の心の中に生きていると言う実感がありました。石塚先生のやさしいお話のしかたが心に中にしみこみました。
  • 塔とツリーというスカイツリーの本質が、日本の精神風土とマッチしていることが分かった。大変おもしろかった。出版物など書かれたものとはちがう迫力があった。
  • 五重塔の建築構造がスカイツリーの構造に応用されていること、仏像の作り方に仏教と日本固有の樹木信仰の融合が見られるなど、普段知ることのできない、幅の広い教養を得ることができてよかったです。

これからも、『千住アートメチエ 文化教養講座』では、様々な分野のプロフェッショナルをお招きし、社会人が学べる場を皆さんと共に作っていきたいと願っております。

次回の文化教養講座へのご参加を、スタッフ一同、心よりお待ちしております。

この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

カテゴリー: 文化教養講座

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