【生徒作品】『終活新聞』(中1・K君)

教室に掲示されたK君の新聞

教室に掲示されたK君の新聞

いつも明るく元気な中学一年生のK君は、勉強に趣味にと毎日忙しい日々を送っています。

そんな彼が昨年、六年生だった時に向き合ったテーマが『終活』でした。きっかけは、経済ジャーナリスト金子哲雄さんが肺カルチノイドという病気で亡くなったことだそうです。

今まで、死は漠然と遠い未来のことだと考えてきましたが、実はそうではないのだということを強く感じたそうです。そして、修学旅行で訪れた京都建仁寺で、お坊さんから米国の経営者スティーブ・ジョブズの話を聞き、「死」だけではなく、「後悔しない生き方」とは何かを考えたと教室で話してくれました。今回は、『終活』という難しいテーマを子どもにもわかりやすくと考え、新聞というかたちで発表してくれました。どうぞ、ご覧ください。

作品紹介

『終活新聞』
中1・K君

『終活』とは人生の最後をよりよく迎えるための準備です

「後悔しない生き方」とはなんだろう?

二〇一二年十月二日、流通ジャーナリストの金子哲雄さんは、肺カルチノイドという病気で亡くなった。僕は、金子さんの計画的で充実している死までの道のり『終活』に、とても感動した。皆さんにも、金子のすごさを知って欲しい。また、自分が、悔いなく死を迎えられるように考えて欲しいので、僕はこの新聞を書いた。死の話は、「縁起でもない」と、敬遠されがちだ。しかし、終活は死後のためだけではなく、今を安心して生きるためにつながる話なので、ぜひ読んでみてほしい。

死を見つめる名言

スティーブ・ジョブズは、米国の経営者で、IT業界において大成功をおさめた。そんな彼の成功を支えたのは、「仏教」、そして「禅の教え」だと伝えられている。彼の名言を紹介する。

『毎日、「今日が人生最後の日と思って生きなさい。やがて必ず、その通りになる日がくるから」これは私にとって強烈な印象を与える言葉だった。この言葉を知って以来、毎日、私は鏡を見て、自分にこう問いかけることを日課としてきた。「もし今日が自分の人生最後のとしたら、今日やろうとしていることを私は本当にやりたいだろうか?」。それに対する答えが“NO”の日が幾日も続くと、そろそろ何かを考える必要があるとわかる』

僕は、この言葉を、小学校の修学旅行で行った京都の建仁寺でお坊さんから聞いたとき、衝撃を受けた。この経験がきっかけとなり、僕は、「死」とは、なんだろう?「後悔しない生き方」とはなんだろうと考え始めた。皆さんは、この言葉を聞いてどう思うだろうか?

エンディングノート

まず、終活に欠かせないものとして、エンディングノートをおすすめする。エンディングノートには、保険、銀行口座、クレジットカードなど、お金に関することや、友人、親族などの連絡先、家系図といった人間関係に関わる大切な情報を記入できる。さらに、もしもの時のために、かかりつけ医、介護、延命措置などの医療に関わることや、相続、葬儀、お墓など、死後に家族がこまらないよう自分の意志を伝える事ができる。日頃からエンディングノートを作っておくことで、自身の情報整理に役に立つことはもちろん、もしもの時に備えることができる。

オススメの一冊


「早期リタイアさせていただきます」
この会葬礼状は、金子さんが生前に用意されたものです。死期を悟った金子さんは、会葬礼状まで生前に用意して、自分の葬儀を自分でプロデュース、自らの死をも「流通ジャーナリスト」としての情報発信の場にしたのでした。しかし、金子さんが「余命0」宣告を受け入れて死の準備を整えるまでには、乗り越えなければならない悲しみ、苦しみ、そして何より、大切な妻を残していくことへの葛藤がありました。死の一か月前から、最後の力を振り絞って書き上げた本です。

終活の大先輩

涅槃図 (お釈迦さまがお亡くなりになった場面を描いた図)

涅槃図 (お釈迦さまがお亡くなりになった場面を描いた図)

最近、「終活」という言葉をよく耳にするようになった。実は、お釈迦さまは終活の大先輩。自分の死を自覚すると、葬儀や供養の仕方、今後の修行のあり方などを事細かに弟子たちに残した。

どんなに頑張ってみても、人生はたかだか一〇〇年程度。人類の歴史の中でもほんの一瞬にしか過ぎないこの自分という存在の、その生きた証と価値をどう意味づけるのかこそが、「終活」なのだ。お釈迦様の教えが二五〇〇年にもわたって脈々と受け継がれてきたのは、その教えや生き方が多くの人々を支え、救ってきたからなのだろうと思う。自分の行いや言葉や思いは、誰かの手助けになっているのか。「あの人がいてくれて良かった」と、誰かに思ってもらえる自分であるのか――。自身の人生最期の瞬間をイメージする時、自ずと生活や意識が変わってくるはずだ。

この作品を読んだ教室の生徒たちのコメント

  • もしもの時に、ちゃんと自分の意志を伝えられるというのは、とてもよいことだと思います。(小6・Y君)
  • 「終活」ということばを、僕は初めて聞きました。自分が死ぬ時、どのように最期をむかえたいかが重要なのだと思います。(中1・K君)
  • 「終活新聞」を読んで、いつ死んでもおかしくないと思った。また、人は死ぬために生きていると思うと、不思議な気持ちになった。一日一日を大切に生きたい。(中2・O君)

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この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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カテゴリー: 授業と生徒作品

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