【ブックレビュー】『ルドルフとイッパイアッテナ』(斉藤洋)

ルドルフとイッパイアッテナ

内容紹介

飼い猫のルドルフは、トラックの荷台で気を失ってしまい、遠く離れた町にたどり着きます。その町で出会ったのは、とてつもなく大きなトラねこ「イッパイアッテナ」でした。ルドルフは、イッパイアッテナから、のら猫として生きていくための「教養」を学ぶことになります。

子どもたちのブックレビュー

Iさん・小5

考えてほしいこと

読む前に

  • あなたには「こんな人になりたい」という、あこがれの人はいますか? その人の、どんなところがよいと思いますか?
  • あなたは、勉強していろいろなことを知ることが、なぜ必要なのだと思いますか?

読んだ後に

  • あなたには、イッパイアッテナのような人物や友だちはいますか?
  • イッパイアッテナは、ルドルフに、教養が必要だと言います。「教養」とは、さまざまなことを学んだり考えたりすることで身につけられる、知識や心の豊かさのことです。
    • イッパイアッテナは、のら猫生活を送っています。文字が読め、たくさんのことを知っていることで、どんなよいことがありますか?
    • 「教養」を身につけることは大切だと思いますか? それはなぜですか?
    • 知識だけでは「教養」を身につけたことになりません。あなたは、将来、どんな心の持ち主になりたいですか?

この本について

キーワード:仲間 生き方 

まだ小さな黒猫ルドルフが、強くかしこい兄貴分・イッパイアッテナの元で成長していく物語です。特に、荒々しいのに深い教養を持つ「イッパイアッテナ」というキャラクターと、猫たちの間で結ばれる熱い友情が、読む人の心をとらえます。

猫なのに人間の文字が読め、たくさんの知識を持っているイッパイアッテナは、ルドルフに「教養」の大切さを説きます。教育が義務付けられている日本では、知識を得ることの重要性をことさら感じることは少ないかもしれません。しかし、のら生活を送る彼らにとって、文字が読めることや物事を知っていることは、生きる上でとても大切なことです。ルドルフの元いた町が分かったのも、そこに行く手段を見つけ出せたのも、文字が読め、様々な知識があったからでした。もし教養がなければ、私たちは、様々な場面で不自由を強いられることになります。

また、それだけでなく、教養は、その人(猫)の考える力や、人格・品性に関わります。知識によって選択肢が増え、自由になるとともに、何を選ぶのかを決めるための「考える力」が必要になります。その際、損得だけではなく、自分が何を優先するべきかという価値観も問われますが、それもまた教養によって培われるものです。イッパイアッテナには過去へのこだわりや乱暴な面もありますが、同時に、深い知恵と懐の深さ、そして、誇りが感じられます。

「教養」は、ルドルフの成長の指針となる、大切なキーワードになっています。ことばと行動を通して、生き様を示してくれるイッパイアッテナとルドルフは、教師と生徒の関係を越え、固い友情で結ばれていきます。

この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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