【2015読書感想文特集】『うなぎ 一億年の謎を追う』(中学生向け課題図書)

うなぎ 一億年の謎を追う (科学ノンフィクション)

それぞれの課題図書の紹介と考えるポイント、声がけのヒントなど、読書感想文に役立つ情報を、順次公開しています。

内容の紹介

2009年5月、世界中でだれも見たことのない「ウナギの卵」が発見されました。うなぎが海で産卵し、成長しながら日本の川を遡上していくことは知られていますが、より具体的に「いつ、どこで卵を産むのか」は、長い間謎に包まれていたのです。この本では、約四〇年間にわたってウナギの研究をしてきた塚本さんが、仮説と検証をくりかえしながら、ねばり強く調査を続け、ウナギの卵を発見するまでを紹介しています。

読む前の下ごしらえ

考えてほしいこと

読む前に、次のことを考えてみましょう。

  • あなたは、うなぎを食べたことがありますか。うなぎはおいしかったですか。
  • 生きているうなぎを見たり、触ったりしたことはありますか。それは、いつ、どこで体験しましたか。
  • もしあなただったら、どんな方法で「うなぎの卵」を探しますか。
ニホンウナギ【絶滅危惧種】  (Temminck & Schlegel, 1847)

ニホンウナギ【絶滅危惧種】
(Temminck & Schlegel, 1847)

うなぎの蒲焼き

うなぎの蒲焼き

読んだ後に

読み終わったら、次のことを考え、書いてみましょう。

考えるヒント

  • 塚本さんがどのような仮説を立て、調査・検証していったかを、整理してみましょう。より臨場感を持って、科学的なものの見方や態度を学ぶことができるでしょう。
  • 塚本さんが、だれも成功していなかった「ウナギの卵」の発見を成功させることができたのはなぜだと思いますか。塚本さんの研究者としての姿勢について、考えてみましょう。
  • ウナギの卵の発見は、ウナギについて興味を持っていない人からすれば、あまり価値のないことのように感じられるかもしれません。しかし、その一方で、この調査・研究は、様々な人々の協力によって支えられ、多くの資金が投じられています。あなたは、ウナギの調査・研究をすることが、私たちにとってどのような意味があると考えますか。
  • 科学的なものの見方・調査や研究のしかたを知ることは、あなたにとってどのような意味がありますか。「科学」ということばにとらわれず、あなたの日常のことに目を向けて考えてみましょう。

保護者の方へ

上記の「考えるヒント」を参考に、対話をしながらアイデアを拡げてください。アイデアのメモをたくさん作り、並べ替えながら、感想文の構成を練りましょう。

ウナギの調査・研究の様子を、まるで冒険物語を読むように、わくわく心をはずませながら知ることができる一冊です。

近年、生きたダイオウイカの撮影に成功したことも心踊る出来事でしたが、そうした巨大生物だけではなく、大きさが一ミリメートルにも満たない小さな卵の発見にも、同じくらいの価値と感動があるとわかります。

著者が、仮説を立て、その検証のためにねばり強く調査に取り組む様子から、ぜひ科学的なものの見方や態度を学びとってほしいと思います。

読書感想文を通して考えてほしいテーマ

  • 科学的なものの見方

声がけのヒント

身近なものの持つ「謎」への知的好奇心を大切にすることが、科学的読み物を楽しむための第一歩です。ウナギにまつわる体験や知識を確認したり、ウナギの卵の発見を報じるニュースをインターネットで検索したりするなど、興味・関心を引き出すための働きかけをするとよいでしょう。

ウナギにピンとこない場合、様々な人々の協力のもと、多くの資金をかけ、海洋生物の調査をすることが私たちの生活とどのように結びついているのか、といった内容を話し合ってみましょう。

また、科学的調査にかぎらず「科学的なものの見方」が日常のどのような点で求められるのかを考えることも大切です。

今回の読書感想文コンクール課題図書の中では、『ブロード街の12日間』も、科学的な態度の重要性がテーマの一つになっています。19世紀、街を覆う恐怖と不安に、科学的な思考で立ち向かう研究者と少年の活躍が描かれています。リテラでは、「【2015読書感想文特集】『ブロード街の12日間』(中学生向け課題図書)」で紹介しています。

構成について

構成にルールはありませんが、どう書いたらいいかわからない時は、次のことを参考にしてください。

「誰に、何を伝えたいか」

  • ことばは、他者に思いを伝えるためのものです。考えたことやメモを元に、書き始める前に、「誰に、何を伝えたいか」を考えましょう。「伝えたいこと」は、できるだけ一つにしぼりましょう。
    • 誰に……例)家族、友人、先生
    • 何を伝えたいか……例)本の面白さ、感動したところ、自分の想い
  • 「伝えたいこと」をしぼることで、構成を立てやすくなります。

文章の構成

  • 文章は、三つのパートに分かれることが多いようです(※三段落で書かなければならないという意味ではありません)。
  • 【はじめ】
    • この文章で「伝えたいこと」や、あらすじを、簡単に書きます。なお、あらすじの有無を学校から指定されることもあります。
  • 【なか】
    • 本に貼った付せんや、考えたこと、メモを元に、「伝えたいこと」をより詳しく書いていきます。
    • 物語の内容と自分の体験を交えると、「伝えたいこと」の説得力が増し、生き生きとした作品に仕上がります。
      • 物語で印象に残った場面や人物について書きましょう。また、それに対しどう感じたかを書きましょう。
      • 関連する自分の体験を書きましょう。「いつ、どこで、誰が、どうした」から書き始めるとよいでしょう。
      • 体験は、過去の思い出だけでなく、本を読んだ後に人に聞いたことや、調べたことでもよいでしょう。
      • 体験の最後には、その体験を通して学んだこと・感じたことを、物語の内容と絡めながら書きましょう。
    • 学んだことを実行するのはなぜ難しいのか、そのためにはどうすればよいのかといった、より現実に根ざした内容の段落を追加すると、深みが増します。
  • 【おわり】
    • 「伝えたいこと」をもう一度強調し、未来につながる決意や前向きなことばで締めます。
読書感想文の書き方・文例について、より詳しくは「テーマを考えてから書こう! ~読書感想文のコツ」をご覧ください。
この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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カテゴリー: ブックレビュー

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