【2015読書感想文特集】『パオズになったおひなさま』(中学年向け課題図書)

パオズになったおひなさま

それぞれの課題図書の紹介と考えるポイント、声がけのヒントなど、読書感想文に役立つ情報を、順次公開しています。

内容の紹介

愛花のおばあちゃんは、ひな祭りに、パオズを作ります。その訳を聞くと、おばあちゃんは、子供の頃に住んでいた中国・大連のこと、そして、親友のリンちゃんのことを話してくれました。

読む前の下ごしらえ

考えてほしいこと

読む前に、次のことを考えてみましょう。

  • パオズを知っていますか? それは、いつ、どこで食べましたか? 知らなければ、本やインターネットで調べてみましょう。
包子(中華まん)の画像

包子(中華まん)の画像

  • 「大連」がどこにあるのか知っていますか? 知らなければ、地図やインターネットで調べてみましょう。

読んだ後に

読み終わったら、次のことを考え、書いてみましょう。

考えるヒント

  • 住んでいる場所や仕事、国や肌の色、信じているものなどによって人を分け、見下したり、いじめたりすることを「差別」と言います。
    • お父さんが、中国の人々を差別することなく、対等に接していたのは、どのような考えからでしょうか?
    • おばあちゃんとリンちゃんが、国のちがいを気にせずになかよくなれたのは、なぜだと思いますか?
    • 差別をせず、人と付き合うために、あなたはどのようなことを大切にしたいと思いますか?

保護者の方へ

上記の「考えるヒント」を参考に、対話をしながらアイデアを拡げてください。アイデアのメモをたくさん作り、並べ替えながら、感想文の構成を練りましょう。

物語の舞台となる大連は、1905年から1945年まで日本が租借していた、中華人民共和国遼寧省の南部にある町です。物語では、第二次世界大戦末期という暗い時代を背景に、心を通わせる二人の少女が描かれます。彼女たちは戦争のこともよくわからず、ただ素直に絆を深めていきます。国や立場を越える純粋さが、この物語の中心と言えるでしょう。ただし、その純粋さは、何も知らない子どもだから許されているところもあります。物語に直接的な戦争の描写はありませんが、周囲の人間の疑り深い目や、スパイ容疑で憲兵に連行されてから塞ぎこんでしまうお父さんの姿などは、人の心まで変えてしまう戦争の不気味さを感じさせます。少女たちは国の違いなど意識しませんが、情勢の移ろいとともに、否応なく、隔てられていきます。リンちゃんにあげた雛人形は、おばあちゃんの(あるいは人間の)純粋な子供時代を表しているようにも思えます。また、リンちゃんからもらったパオズは、おばあちゃんの家族が経営していたお店の小麦粉でできています。おいしく、人の心を温めるパオズは、家族やお父さんにとって、自分たちのしてきたことは間違っていないという、人としての誇りを取り戻すものでした。

時代のうねりの中では、この二人の出会いと別れは、本当にささやかなものでしかないのかもしれません。しかし、おばあちゃんは、今もひな祭りにはパオズを作り、その理由やリンちゃんの思い出は、孫の世代に伝わっていきます。人が争わず、人であり続けるためには、そのようなささやかなものを積み重ねていく他ないのかもしれません。

読書感想文を通して考えてほしいテーマ

  • 戦争と差別

声がけのヒント

戦争と、子どもたちの純粋さの対比が物語の核心にあります。ただし、純粋だから人を憎まず差別をしないというのも、また行き過ぎた見方かもしれません。思想やプロパガンダを鵜呑みにして国や人種を差別するのも、ある意味、純粋さによるものだからです。子どものままでありたいと願っても、私達は成長しなければなりません。大切なことは、多面的なものの見方を養うこと、そして、自分の目で見て、自分の頭で考え続けることでしょう。

今年の読書感想文課題本で、戦争を扱ったものとしては、『お話きかせてクリストフ (文研ブックランド)』があります。ルワンダ紛争が背景になっていますが、こちらも子どもの目で見た戦争が描かれており、戦争について考えるのに適しているでしょう。リテラでは『【2015読書感想文特集】『お話きかせてクリストフ』(中学年向け課題図書)』で紹介しています。

構成について

構成にルールはありませんが、どう書いたらいいかわからない時は、次のことを参考にしてください。

「誰に、何を伝えたいか」

  • ことばは、他者に思いを伝えるためのものです。考えたことやメモを元に、書き始める前に、「誰に、何を伝えたいか」を考えましょう。「伝えたいこと」は、できるだけ一つにしぼりましょう。
    • 誰に……例)家族、友人、先生
    • 何を伝えたいか……例)本の面白さ、感動したところ、自分の想い
  • 「伝えたいこと」をしぼることで、構成を立てやすくなります。

文章の構成

  • 文章は、三つのパートに分かれることが多いようです(※三段落で書かなければならないという意味ではありません)。
  • 【はじめ】
    • この文章で「伝えたいこと」や、あらすじを、簡単に書きます。なお、あらすじの有無を学校から指定されることもあります。
  • 【なか】
    • 本に貼った付せんや、考えたこと、メモを元に、「伝えたいこと」をより詳しく書いていきます。
    • 物語の内容と自分の体験を交えると、「伝えたいこと」の説得力が増し、生き生きとした作品に仕上がります。
      • 物語で印象に残った場面や人物について書きましょう。また、それに対しどう感じたかを書きましょう。
      • 関連する自分の体験を書きましょう。「いつ、どこで、誰が、どうした」から書き始めるとよいでしょう。
      • 体験は、過去の思い出だけでなく、本を読んだ後に人に聞いたことや、調べたことでもよいでしょう。
      • 体験の最後には、その体験を通して学んだこと・感じたことを、物語の内容と絡めながら書きましょう。
    • 学んだことを実行するのはなぜ難しいのか、そのためにはどうすればよいのかといった、より現実に根ざした内容の段落を追加すると、深みが増します。
  • 【おわり】
    • 「伝えたいこと」をもう一度強調し、未来につながる決意や前向きなことばで締めます。
読書感想文の書き方・文例について、より詳しくは「テーマを考えてから書こう! ~読書感想文のコツ」をご覧ください。
この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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カテゴリー: ブックレビュー

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