内容の紹介
ウィリアムは、耳が聞こえないことを気にしませんでした。人一倍努力を重ね、野球選手になります。チームでは、投げてよし、打ってよしの大活躍。ある時、審判の声が聞こえないことに困ったウィリアムは、すばらしいアイデアを思いつきます。
読む前の下ごしらえ
考えてほしいこと
読む前に、次のことを考えてみましょう。
- 耳の聞こえない人の生活について考えてみましょう。
- 耳が聞こえないと、どんな困ったことがあるでしょうか。
- 耳せんをして、生活してみましょう。音がよく聞こえる生活と比べて、どんな違いがあるでしょうか(外に出ると危険なので、家の人が一緒にいるときに試してみましょう。)
合わせて知りたい
- ウィリアム・ホイは、1888年から1902年まで、アメリカのメジャーリーグで活躍しました。ウィリアムの姿を写真で見てみましょう。
読む
読む時は、印象に残った場面や不思議に思った場面など、「心が動いたところ」にふせんを貼りながら読みましょう。書く時の材料になります。
また、できれば、家族や友だちと、同じ本を読んでみましょう。自分と違う感想や考え方を知ると、感想文の内容がより深いものになります。
準備する
気持ち
本を読んで感じた気持ちをことばにするのは、なかなか難しいものです。読み終わったら、次の「気持ちについて考えよう」シートを印刷して、感じた気持ちに丸をつけてみましょう。対話のヒントになります。
体験
読書感想文では、本の内容と自分の体験を結びつけることが大切です。自分の体験が思いつかない場合は、このページの「考えるヒント」を参考にして、本のテーマについて誰かに聞いたり、調べたり、新しく何かをしてみたりするとよいでしょう。
考えるヒント
◆耳のきこえないウィリアムが野球をすることをよく思わなった人を箇条書きであげて、その人たちの反応をまとめてみましょう。
- (例) おとうさん : 「野球か……どうせ続かないさ」と言った。
◆ウィリアムが考えたジェスチャーやサインは、ウィリアムだけでなく、チームメイトや観客にも、とっても便利でした。
- チームメイトにとっては、どのような点が便利だったのでしょうか。考えてみましょう。
- 観客にとっては、どのような点が便利だったのでしょうか。考えてみましょう。
◆スター選手になったウィリアムが、ある日、外野に走っていくと、観客たちがみな、立ち上がって、両手をふってくれました。
- 野球でどんなにつらいことがあっても泣かなかったウィリアムの目に涙があふれたのは、どうしてだとあなたは思いますか。
保護者の方へ
上記の「考えるヒント」を参考に、対話をしながらアイデアを拡げてください。アイデアのメモをたくさん作り、並べ替えながら、感想文の構成を練りましょう。
読書感想文を通して考えてほしいテーマ
- ハンディキャップとあきらめない心
- ユニバーサル・デザイン
この本について
ハンディキャップ と あきらめない心
「ウィリアム・ホイは、耳が聞こえなかったことを気にしなかった。」
この本の最後のページにあるウィリアム・ホイのプロフィールは、そのようにはじまっています。
しかし、本当にそうでしょうか。
この本でも紹介されているように、ウィリアムはさまざまな場面で聴覚障がい者であることを理由に、野球をすることに対して否定的な見方をされています。その度に、ウィリアムは自らが聴覚障がい者であることと向き合わなければならなかったはずです。そうした心境を想像しながら、なぜウィリアムがあきらめない心の強さを持つことができたのか、考えてみましょう。
ユニバーサル・デザイン
ご家庭で使っているシャンプーとリンスのボトルを見てみてください。
シャンプーのボトルの側面や、ノズル部分に、でこぼことした溝がありませんか。
目の不自由な人も、目の見える人でも、目を閉じて洗髪する時に、さわっただけで シャンプーとリンスの違いわかるようにする工夫です(参考:花王より「シャンプーのきざみができるまで」)。
こうした、個人の能力や、年齢、性別、国籍や文化にかかわらず、できるだけ多くの人が利用可能なように設計されたデザインを、「ユニバーサル・デザイン」といいます。
ウィリアム・ホイの考えた審判のジェスチャーやチームのサインプレーは、「ユニバーサル・デザイン」の視点から考えても価値のある工夫だったといえます。このように「ユニバーサル・デザイン」の視点に立って、身近にある様々なものにある工夫を発見してみても面白いかもしれません。
合わせて読みたい
「きこえ」が不自由な人の生活や気持ちを理解するための絵本です。
『わたしたち 手で話します』
生まれつき耳が聞こえないリーザは、手を使って話をします。ある日、リーザは、手話のできる男の子のトーマスと出会います。トーマスは声を使って話をしますが、両親が耳が聞こえないので、手話を覚えたのです。トーマスを通して、リーザと仲良くなった友だちは、耳の聞こえない人がどんなに豊かに世界を感じ、表現しているかを知ります。
『ローラのすてきな耳』
ローラは、耳がよく聞こえないために、なかなか友だちの仲間に入れません。しかし、お医者さんからデジタルの耳=補聴器をもらってから、ローラのくらしは大きく変わります。
より深く知りたい
次のウェブサイトを読むと、野球の審判のジェスチャーについて知ることができます。
次のマークは、聞こえが不自由なことを示すマークです。こうしたマークを身につけている人がいたら、配慮ある行動を心がけましょう。(内閣府「障害者に関するマークについて」より)
- 耳マーク
聞こえが不自由なことを表す、国内で使用されているマークです。聴覚障害者は見た目では分からないために、誤解されたり、不利益をこうむったりと、社会生活上での不安が少なくありません。このマークを提示された場合は、相手が「聞こえない」ことを理解し、コミュニケーションの方法への配慮について御協力をお願いいたします。
- 聴覚障害者標識(聴覚障害者マーク)
聴覚障害であることを理由に免許に条件を付されている方が、運転する車に表示するマークです。マークの表示については、義務となっています。危険防止のためやむを得ない場合を除き、このマークを付けた車に幅寄せや割り込みを行った運転者は、道路交通法の規定により罰せられます。
次のサイトでは、聴力が低下した人や補聴器をつけた人に対して、私たちが知っておくべきことや協力の仕方を紹介しています。
構成について
構成にルールはありませんが、どう書いたらいいかわからない時は、次のことを参考にしてください。「誰に、何を伝えたいか」
- ことばは、他者に思いを伝えるためのものです。考えたことやメモを元に、書き始める前に、「誰に、何を伝えたいか」を考えましょう。「伝えたいこと」は、できるだけ一つにしぼりましょう。
- 誰に……例)家族、友人、先生
- 何を伝えたいか……例)本の面白さ、感動したところ、自分の想い
- 「伝えたいこと」をしぼることで、構成を立てやすくなります。
文章の構成
- 文章は、三つのパートに分かれることが多いようです(※三段落で書かなければならないという意味ではありません)。
- 【はじめ】
- この文章で「伝えたいこと」や、あらすじを、簡単に書きます。なお、あらすじの有無を学校から指定されることもあります。
- 【なか】
- 本に貼った付せんや、考えたこと、メモを元に、「伝えたいこと」をより詳しく書いていきます。
- 物語の内容と自分の体験を交えると、「伝えたいこと」の説得力が増し、生き生きとした作品に仕上がります。
- 物語で印象に残った場面や人物について書きましょう。また、それに対しどう感じたかを書きましょう。
- 関連する自分の体験を書きましょう。「いつ、どこで、誰が、どうした」から書き始めるとよいでしょう。
- 体験は、過去の思い出だけでなく、本を読んだ後に人に聞いたことや、調べたことでもよいでしょう。
- 体験の最後には、その体験を通して学んだこと・感じたことを、物語の内容と絡めながら書きましょう。
- 学んだことを実行するのはなぜ難しいのか、そのためにはどうすればよいのかといった、より現実に根ざした内容の段落を追加すると、深みが増します。
- 【おわり】
- 「伝えたいこと」をもう一度強調し、未来につながる決意や前向きなことばで締めます。
2017年 その他の課題図書
随時追加していきます。
2017年 夏期講習
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