【2016年読書感想文特集】『木のすきなケイトさん』H.ジョゼフ・ホプキンズ(中学年向け課題図書)

木のすきなケイトさん―砂漠を緑の町にかえたある女のひとのおはなし

内容の紹介

ケイトは、森の中で過ごすことが何よりも好きな女の子。世界中の木について勉強し、当時はまだめずらしかった女性の科学者になります。けれど、おとなになって暮らすことになったのは、木のない砂漠の町でした。ケイトさんは、この町を、どのように変えていくのでしょうか。実在の人物がモデルになった絵本です。

読む前の下ごしらえ

考えてほしいこと

読む前に、次のことを考えてみましょう。

  • あなたは、山や森、野原に行ったことはありますか? どんなことをして遊びましたか?
  • あなたは、自然のことを学ぶのが好きですか? 天気のこと、人間や動物のこと、木や草のことなど、なんでもかまいません。なぜ好きなのか、考えてみましょう。
  • 公園や道など、身の回りから植物がなくなってしまったら、どう感じますか? 想像してみましょう。

読む

読む時は、印象に残った場面や不思議に思った場面など、「心が動いたところ」にふせんを貼りながら読みましょう。書く時の材料になります。
また、できれば、家族や友だちと、同じ本を読んでみましょう。自分と違う感想や考え方を知ると、感想文の内容がより深いものになります。

準備する

気持ち

本を読んで感じた気持ちをことばにするのは、なかなか難しいものです。読み終わったら、次の「気持ちについて考えよう」シートを印刷して、感じた気持ちに丸をつけてみましょう。対話や作文の際のヒントになります。

体験

読書感想文では、本の内容と自分の体験を結びつけることが大切です。自分の体験が思いつかない場合は、このページの「考えるヒント」を参考にして、本のテーマについて誰かに聞いたり、調べたり、新しく何かをしてみたりするとよいでしょう。

より深く知るために

北カリフォルニア ジャイアント・セコイアの森

ケイトさんが住んでいた北カリフォルニアには、ジャイアント・セコイアの森があります。セコイアは、最も大きな木のひとつで、高さ80メートル以上、樹齢は1,000年以上にもなります。
7299721174_563b3dd0ef_b800px-General_Sherman_tree_looking_up

6歳の頃(1860年代)、ケイトさんはカリフォルニア州オークランドにある「メリット湖」の農場に引っ越しています。下の写真はその頃に撮影されたメリット湖の様子です。子供の頃のケイトさんは、奥に写っているような森の中でも遊んでいたのかもしれません。

963d23cf57df085598cbb80dda3171a6
Title:1460. View from Schotchler’s Point, looking across Lake Merritt, Oakland, Alameda County.Creator/Contributor:Lawrence & Houseworth, publisher Date:1860/1870 Contributing Institution:Society of California Pioneers

サンディエゴの位置

ケイトさんが大人になって住むことになったサンディエゴの場所について確認しましょう。

バルボア・パーク

ケイトさんが作ったバルボア・パークは、動物園や博物館、美術館、庭園などが集まる大きな公園になっています。そのごく一部ですが、歩き回ってみましょう(より広い地図を見る)。

ケイトさんについて

この動画では、ケイトさんの写真や銅像を見ることができます。

▼日本語訳(参考)
※訳は、動画および動画を作成した「Womens Museum of California」のKate Sessionsのページを元にしています。

1881年にカリフォルニア大学バークレー校を卒業したキャサリン・オリビア・セッションズの卒業論文は「女性の働くフィールドとしての自然科学」でした。
彼女はサンディエゴに教師として来ましたが、サンディエゴの種苗場を使い一連のビジネスベンチャーを始め、市内にいくつかの種苗場を持つに至りました。
彼女は植物や造園など多数の記事を書き、園芸の専門家として国際的な名声を高めました。
1906年、サンディエゴ フローラル アソシエーションの設立を支援し、サンディエゴの学校のための、農業と造園の管理者に任命されました。
植物の導入の功績を讃えられ、セッションズは、女性として初めて、アメリカのフランク・N・メイヤー賞を授与されました。

しかし、過去・現在・未来のサンディエゴの人々のため、彼女がしてくれた真の功績は、バルボア・パークをつくってくれたことです。
1892年、彼女は市から「都市公園」の土地を種苗場として借り受け、年間百本の木を植えました。また、300本を超える木を市内に植えました。彼女は長期間、庭園を持続させるための委員会の設立を助けました。

バルボア・パークの入り口には、「バルボア・パークの母」と呼ばれた彼女の銅像が立っています。これは、現実の女性に捧げられた全身像としては、市内唯一のものです。

この他にもケイトさんについて調べてみましょう。

考えるヒント

  • あなたはどんなことが好きですか? 好きなことをしている時の気持ちや考えていることを、思い出して書き出してみましょう。
  • ケイトさんの仕事は、町の人々を豊かにしました。あなたの好きなことは、将来どのように人を助けることができるでしょうか。
    • あなたが好きなことは、どうしたら人々の幸せにつながるでしょう。
    • あなたの好きなことをより深く学ぶためには、どうしたらよいでしょうか。
    • 今、その仕事をしている人にインタビューをしてもよいでしょう。
  • あなたの町には、植物や自然がありますか?
    • 公園や道沿いに植物や自然があることで、どんなよいことがあるのでしょうか。考えてみましょう。
  • あなたは、自分の町をより暮らしやすくするために、変えたいことがありますか?
    • 変えるためには、どうすればよいでしょうか。

保護者の方へ

上記の「考えるヒント」を参考に、対話をしながらアイデアを拡げてください。アイデアのメモをたくさん作り、並べ替えながら、感想文の構成を練りましょう。

読書感想文を通して考えてほしいテーマ

  • 自然
  • 農業
  • 学び
  • 好きという気持ち
  • 夢をあきらめない
  • 人の役に立つ

この本について

カリフォルニア州サンディエゴにある「バルボア公園の母」と呼ばれたケイト・セッションズの実話に基づくお話です。女の子が好きなことを好きなように学ぶことが難しい時代、科学を学ぶことを諦めなかったケイトさんは、やがて砂漠の町でたくさんの木を育てることに成功します。

ケイトさんの熱心な活動は、町の人々の心を動かします。それは、好きなことを突き詰めて、より多くの人の役に立ちたいという思いが伝わったからでしょう。

感想文では、自分の好きなことを、どの様に社会で活かしていきたいか、夢を語ってみるとよいでしょう。また、ケイトさんのように、自然と関わった体験や、そのなかで得た知識について掘り下げてまとめるなど、科学の視点から書いてもよいでしょう。

構成について

構成にルールはありませんが、どう書いたらいいかわからない時は、次のことを参考にしてください。

「誰に、何を伝えたいか」

  • ことばは、他者に思いを伝えるためのものです。考えたことやメモを元に、書き始める前に、「誰に、何を伝えたいか」を考えましょう。「伝えたいこと」は、できるだけ一つにしぼりましょう。
    • 誰に……例)家族、友人、先生
    • 何を伝えたいか……例)本の面白さ、感動したところ、自分の想い
  • 「伝えたいこと」をしぼることで、構成を立てやすくなります。

文章の構成

  • 文章は、三つのパートに分かれることが多いようです(※三段落で書かなければならないという意味ではありません)。
  • 【はじめ】
    • この文章で「伝えたいこと」や、あらすじを、簡単に書きます。なお、あらすじの有無を学校から指定されることもあります。
  • 【なか】
    • 本に貼った付せんや、考えたこと、メモを元に、「伝えたいこと」をより詳しく書いていきます。
    • 物語の内容と自分の体験を交えると、「伝えたいこと」の説得力が増し、生き生きとした作品に仕上がります。
      • 物語で印象に残った場面や人物について書きましょう。また、それに対しどう感じたかを書きましょう。
      • 関連する自分の体験を書きましょう。「いつ、どこで、誰が、どうした」から書き始めるとよいでしょう。
      • 体験は、過去の思い出だけでなく、本を読んだ後に人に聞いたことや、調べたことでもよいでしょう。
      • 体験の最後には、その体験を通して学んだこと・感じたことを、物語の内容と絡めながら書きましょう。
    • 学んだことを実行するのはなぜ難しいのか、そのためにはどうすればよいのかといった、より現実に根ざした内容の段落を追加すると、深みが増します。
  • 【おわり】
    • 「伝えたいこと」をもう一度強調し、未来につながる決意や前向きなことばで締めます。
読書感想文の書き方・文例について、より詳しくは「テーマを考えてから書こう! ~読書感想文のコツ」をご覧ください。
この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

タグ:
カテゴリー: ブックレビュー

リテラ言語技術教室について

menu_litera