【2016年読書感想文特集】『さかさ町』F.エマーソン・アンドリュース(中学年向け課題図書)

さかさ町

内容の紹介

リッキーとアンの兄妹は、汽車の旅の途中、「さかさ町」という、不思議な町に泊まることになります。「さかさ町」では、建物の上下、車の左右、大人と子どもの役目、学校の常識、野球のルールなど、あらゆるものがすべてさかさま。でも、さかさまには、さかさまなりのよいところがたくさんあります。たくさんの驚きとともに、私たちの常識について考えさせられる一冊です。

読む前の下ごしらえ

考えてほしいこと

読む前に、次のことを考えてみましょう。

  • 「さかさ町」とは、どんな町でしょうか? 本の表紙の絵をよく見て、さかさになっているものを探してみましょう。
  • あなたや家族にとって当たり前のことも、ちがう家や場所では違ったという経験はありますか? その時、どんな気持ちになりましたか? 思い出してみましょう。

読む

読む時は、印象に残った場面や不思議に思った場面など、「心が動いたところ」にふせんを貼りながら読みましょう。書く時の材料になります。
また、できれば、家族や友だちと、同じ本を読んでみましょう。自分と違う感想や考え方を知ると、感想文の内容がより深いものになります。

準備する

気持ち

本を読んで感じた気持ちをことばにするのは、なかなか難しいものです。読み終わったら、次の「気持ちについて考えよう」シートを印刷して、感じた気持ちに丸をつけてみましょう。対話や作文の際のヒントになります。

体験

読書感想文では、本の内容と自分の体験を結びつけることが大切です。自分の体験が思いつかない場合は、このページの「考えるヒント」を参考にして、本のテーマについて誰かに聞いたり、調べたり、新しく何かをしてみたりするとよいでしょう。

考えるヒント

  • 「さかさ町」のやり方やルールで、「なるほど!」と思ったものはどれですか? なぜ、そのやり方に納得しましたか?
  • 世界にはたくさんの国があり、独自の文化があります。外国の人が日本を旅行して、文化の違いに驚くかもしれません。反対に、あなたが外国を旅行して、驚いてしまうかもしれません。
    • 自分が普段当たり前だと思っていることとは違う経験をしたことがありますか? 思い出してみましょう。
    • 日本とは違う外国の文化・マナー・暮らし方を調べてみましょう。
  • 「さかさ」の生活を楽しんでみましょう。
    • 本をさかさにして読んでみましょう。
    • 逆立ちをして部屋の中を見渡してみましょう。
    • 家族のために、家の仕事をしてみましょう。
    • 利き手とは逆の手で、ノートを取ってみましょう。
    • デザートからごはんを食べてみましょう。
  • 「さかさ」にして、社会がどのように変わるかを考えてみましょう。
    • 夜に学校に行き、朝に眠るのだとしたら?
    • 子どもが仕事をして、大人が学校に行くのだとしたら?
    • 生まれた時は老人で、どんどん若返っていくのだとしたら?
    • 良いことをした人がつかまり、悪いことをした人がほめられるのだとしたら?
  • あなたが「さかさ」にしたほうがいいと思う、ルールややり方はありますか?

保護者の方へ

上記の「考えるヒント」を参考に、対話をしながらアイデアを拡げてください。アイデアのメモをたくさん作り、並べ替えながら、感想文の構成を練りましょう。

読書感想文を通して考えてほしいテーマ

  • 暮らし
  • 想像力
  • 発見
  • 新しい体験

この本について

「さかさ町」では、子どもが働きお年寄りが遊び、建物は屋根を下にして建ち並び、文字も上下さかさに書いてあります。リッキーとアンの兄妹は、初めはただただ驚くばかりでしたが、学校や病院でさかさ町独自のシステムを聞くと、しだいに町のことが好きなっていきます。
この物語を読む子どもたちも、「さかさ町」のような生活をしてみたいと思うことでしょう。

感想文を書く際には、「もしも」という言葉を使って、自分の生活を振り返り、いろいろなことを想像してみましょう。面白いアイディアが浮かぶかもしれませんし、もしかしたら、「さかさ」になっては困ることがあるということに気づくかもしれません。

「当たり前」を疑い、違う方法・違うあり方がないかと考えることは、自ら考え行動するために必要な姿勢です。子どもたちが本を読んで楽しんだ経験を大切にしつつ、対話の中で様々な視点から物事を捉える手助けをしてあげてください。きっと、私たちの暮らす社会について、様々な発見があると思います。

構成について

構成にルールはありませんが、どう書いたらいいかわからない時は、次のことを参考にしてください。

「誰に、何を伝えたいか」

  • ことばは、他者に思いを伝えるためのものです。考えたことやメモを元に、書き始める前に、「誰に、何を伝えたいか」を考えましょう。「伝えたいこと」は、できるだけ一つにしぼりましょう。
    • 誰に……例)家族、友人、先生
    • 何を伝えたいか……例)本の面白さ、感動したところ、自分の想い
  • 「伝えたいこと」をしぼることで、構成を立てやすくなります。

文章の構成

  • 文章は、三つのパートに分かれることが多いようです(※三段落で書かなければならないという意味ではありません)。
  • 【はじめ】
    • この文章で「伝えたいこと」や、あらすじを、簡単に書きます。なお、あらすじの有無を学校から指定されることもあります。
  • 【なか】
    • 本に貼った付せんや、考えたこと、メモを元に、「伝えたいこと」をより詳しく書いていきます。
    • 物語の内容と自分の体験を交えると、「伝えたいこと」の説得力が増し、生き生きとした作品に仕上がります。
      • 物語で印象に残った場面や人物について書きましょう。また、それに対しどう感じたかを書きましょう。
      • 関連する自分の体験を書きましょう。「いつ、どこで、誰が、どうした」から書き始めるとよいでしょう。
      • 体験は、過去の思い出だけでなく、本を読んだ後に人に聞いたことや、調べたことでもよいでしょう。
      • 体験の最後には、その体験を通して学んだこと・感じたことを、物語の内容と絡めながら書きましょう。
    • 学んだことを実行するのはなぜ難しいのか、そのためにはどうすればよいのかといった、より現実に根ざした内容の段落を追加すると、深みが増します。
  • 【おわり】
    • 「伝えたいこと」をもう一度強調し、未来につながる決意や前向きなことばで締めます。
読書感想文の書き方・文例について、より詳しくは「テーマを考えてから書こう! ~読書感想文のコツ」をご覧ください。
この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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カテゴリー: ブックレビュー

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